日本では、食品の健康を保つ機能に注目して、特定保健性食品(通称トクホ)と呼ばれる機能を持つ食品を国が認定するシステムがあります。2015年には機能性表示食品制度が始まり、国の認証を受けなくても、申請のみで食品の機能を表示できるようになりました。
機能性食品市場は年々拡大し、食品の機能性を確認するための臨床試験も多く行われるようになりました。その試験の一部は食品の製造・販売会社が直接行うのではなく、開発業務委託機関(CRO)に委託されることもしばしばありました。CROが実施した臨床試験の質や臨床試験の結果が、どのように消費者に伝えられているかは、これまで詳細に検討されていませんでした。
京都大学などの研究グループは、メタ疫学研究により、CROによって実施された一部の機能性食品の臨床試験の論文、それをもとにした広告に、優良と誤認させる要素が多く含まれることを明らかにしました。結果と結論の不一意が多く含まれ、国あるいは消費者庁が機能性表示食品について規制の見直しを検討すべきであることが示唆されました。
研究グループは、臨床試験登録システムに、日本の大手CRO5社によって登録された臨床試験726件のうち、100件をランダムに抽出し、その中から食品に関連したものを選び、それらの研究の質を検討しました。
また、それらの研究結果のプレスリリース、あるいは研究結果をもとにして販売された商品の広告において、研究結果がどのように広報されているかについても検討しました。
結果として、76件が食品に関連したもので、32件が論文として出版されていました。また、臨床試験の結果を広報する3件のプレスリリースと、臨床試験をもとに製造、販売された食品の広告8件、計11件を同定しました。
32件の論文では、実際に報告された主要評価項目の数が、計画段階の主要評価項目の数のおよそ2倍になっていました。そして、32件のうち26件(81%)の論文の抄録で、結果と結論の不一致(spin)を認めました。11件のプレスリリースと広告のうち、8件(73%)に結果と解釈に不一致がありました。
この研究は、あくまで日本の機能性表示食品の臨床試験の一部だけを評価したものですが、一部の試験だけであっても、結果と結論に不一致があり、それがそのまま消費者やメディアに伝えられていることは大きな問題だと考えられています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕