体質との調和15 老衰の急増は超高齢社会の現れか

日本人の死因の調査結果を見ると、2023年(令和5年)の日本人の死亡原因はがん、心疾患(心臓病)、老衰、脳血管疾患、肺炎の順となっています。

以前は、がん、心疾患、脳血管疾患が多くを占めていて、高齢化が進むほど死亡原因として肺炎が徐々に増えていくのに、老衰が少ないのは、病気で亡くなる人が多いからだと言われていました。

2000年ころまでは老衰は7位でしたが、一気に増えてきました。その大きな要因は確かに超高齢社会にあるものの、トップ3に入るようになったのは死因の的確化、見直しが行われるようになったからです。

老衰は、高齢者で他に記載すべき死亡原因がないことを指していて、自然死の場合に使われる用語です。これを厚生労働省も定義として用いていて、医師向けの「死亡診断書記入マニュアル」にも明記しています。

老衰は全体的には増えているものの、大学病院や総合病院では、それほど増えてはいません。その理由として、これらの医療機関は重度の患者が多く、がん、心疾患、脳血管疾患で亡くなる人が多いからだと説明されてきたところがあります。

死亡診断書には病名を書くのが当たり前のことで、老衰は病名ではないので書くべきではないという考えが医師にはあります。また、病名を突き止めて、その治療に果敢に挑戦するのが医師の役割という考えも強くあります。

老衰と記入するのは医師としての敗北と考える人もいて、老衰だとわかっていても心不全と書く医師も少なくありません。確かに、最後は心臓が止まって亡くなるので、心不全と言えなくもないのですが、高齢者の場合には高血圧や糖尿病の基礎疾患がある人が多く、血管の老化から心疾患、脳血管疾患で亡くなる人も多くなっています。

どれが原因なのか死因を特定するのが難しい場合が増えてきたことから、老衰が増えてきていることは事実です。私も家族が亡くなったときに、医師から「多くの疾患があって、どれを死因としてよいかわからない」「心不全と老衰のどちらがよいか」と聞かれて、返答に迷った経験があります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕