「夏でも靴下を履かないと足が冷えて眠れない」「風呂上がりに靴下を履いて寝ているのに足が冷える」というように冷えの体質を訴える人は少なくありません。特に女性は手足の冷えに悩まされている人は多くなっています。
身体が冷えるのは血液の温度が大きく影響しています。冷え性の人も、身体が温まりやすい人も血液の温度は変わらず37~38℃となっています。
その血液の熱によって温められたあと、皮膚からの放熱によって温度が徐々に下げられ、体温計で計ると皮膚表面温度は36~37℃となっています。体温と血液の温度は、1℃ほどの差があるというわけです。
血流がよくて、次々と温かい血液が送られてくれば、その部分の温度は高めに保たれるようになります。しかし、血流がよくないと放熱に血液の熱の補充が追いつかなくなり、身体が徐々に冷えていくことになります。冷え体質の人は、血流がよくないということがいえます。
血液の温度が37~38℃というのは日本人の場合であって、欧米人の血液の温度は39℃ほどと高めになっています。春先や秋口の日本人なら長袖に上着を着ないと少し寒さを感じるような季節でも、欧米から日本に旅行で訪れた方々は半袖で外出しているのを見かけることがあります。
屋外の国際的なスポーツ競技大会で小雨が降ってくると、「欧米人が集まっているところだけ湯気が立っている」というのは運動関係者がよく口にすることです。それだけ欧米人は体温が高くなっている証拠です。
全身の細胞は温まっている状態のときに代謝が高まりやすくなっています。代謝が高まれば、細胞の中でエネルギーを作り出す能力も高まるため、さらに細胞が温まっていくという好循環となっています。身体が温かい人は、もっと身体が温まり、逆に冷える人は、さらに冷えやすくなるということができます。
日本人と欧米人の血液の温度の違いは、歴史的に主に食べてきたものが関係しています。日本人の主食は、現在こそ多彩になっているものの歴史的に食べてきたのは米飯です。欧米人の主食はパンや麺類で、分類としては米飯と同じ糖質ではあるものの“実際の主食は肉”と言われるほど欧米人は肉の消費量が多くなっています。
ステーキのサイズの一つのポンドステーキは、1£(ポンド)の重量のステーキということで、1£は450gに相当します。牛肉100g(脂肪付き)は400kcalほどであるので、450gでは1800kcalにもなっています。
ヨーロッパの文明は北方で発展したために、穀類を充分に摂ることができず、主なエネルギー源を肉類に頼ってきました。肉類には脂肪が多く含まれることから、脂肪を効果的にエネルギーとして血液の温度を高める能力が高まってきました。
脂肪をエネルギーとして代謝させるために必要な成分として、体内で合成されるL‐カルニチンがあります。代謝促進成分のL‐カルニチンは肉類に多く、歴史的に肉類を多く食べてきたことによって体内にL‐カルニチンが多く蓄積される体質となりました。
この体質は、同じ寒い環境で暮らす人たちに遺伝によって伝えられていきました。そのため、肉類を多く食べても脂肪をエネルギーとして代謝させる高い能力が備わり、その分だけ多くの体熱を作ることができるようになったということです。
その能力は、日本人は残念ながら低くなっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕