栄養失調の指標である体重減少と体重増加は、さまざまな疾患の発症につながることが知られていて、高齢者にとって重要な健康問題となっています。世界の高齢者の約4分の1が栄養失調であるといわれています。
歯が少ない人で体重が減少することは明らかにされていますが、体重増加との関連、噛みにくさや口の渇き、むせなどの他の口腔機能が体重減少・増加に及ぼす影響についてはわかっていませんでした。
東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の研究グループは、65歳以上の高齢者約6万4000人を対象にした3年間の追跡調査によって、歯が20本以上ある人に比べて歯が9本以下の人では体重減少が1.17倍、体重増加も1.23倍起こりやすいことがわかりました。
また、噛みにくさがある人、口の渇きがある人でも体重減少が、それぞれ1.12倍、1.11倍、体重増加が1.09倍、1.09倍起こりやすいことがわかりました。
この研究は、2016年、2019年に実施された日本老年学的評価研究調査に参加した高齢者を対象として、2016年時点での歯の本数(20本以上/10〜19本/0〜9本)、咀嚼困難、むせ、口腔乾燥の有無を口腔機能の低下として、2016年時点から2019年時点にかけての体重が5%より減少・増加することと関連しているかを評価しました。
分析では、口腔機能低下がある場合とない場合での体重減少・増加の起こりやすさの比が算出されました。性別・年齢・教育歴・等価所得・婚姻状況・併存疾患(高血圧、糖尿病、がん、脳卒中)・喫煙歴・飲酒習慣の影響を統計学的な手法を用いて除外されています。
その結果、対象者6万3602人中、体重減少・体重増加を経験した人は、それぞれ15.2%、10.4%でした。歯の本数が20本以上、10〜19本、0〜9本の人は、それぞれ60.1%、20.4%、19.5%でした。咀嚼困難、むせ、口腔乾燥を訴えた人は、それぞれ23.9%、16.9%、18.6%でした。
分析の結果、体重減少の起こりやすさは、歯の本数が20本以上の人に比べて、10〜19本の人では1.12倍、0〜9本では1.17%高くなることがわかりました。少ない歯の本数や咀嚼困難、口腔乾燥と体重増加においても同様の結果がみられました。しかし、むせでは体重減少・増加ともに統計的に意味のある関連は見られませんでした。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕