コホート研究における食事因子の疾病リスクの関与は栄養素に重点が置かれ、例えば塩分の摂取が高血圧のリスクと関連していることが明らかにされてきました。
しかし、食事はさまざまな栄養素の組み合わせで構成されるだけでなく、調理方法や食事時間などの時間因子を含む複雑な生活行動です。
これまで心血管リスクの低下につながる地中海食や血圧を上げないDASH食などは「食事」に注目することが疾病リスクの軽減につながることが示されてきました。しかし、食事を評価することは、その複雑さのために容易ではありませんでした。
従来は主成分分析や因子分析による食事の解析が行われてきましたが、調理方法や食行動などを反映させることは困難でした。
東北大学大学院医工学研究科の研究グループは、これらを含む簡易型自記式食事歴質問票のデータ解析に人工知能(AI)を用いて、協同組合仙台卸商センター組合員の男性447名を対象に、質問票の回答から食事パターンの分析を行い、検出された食事パターンと2年間(2008年から2010年)の高血圧発症リスクとの関連を検討しました。
食事パターンは、それぞれの摂取頻度の高い食品から「海産物とアルコール飲料」「低タンパク・低食物繊維・高炭水化物」「乳製品・野菜」「肉」の4数類に分類されました。
2年間の追跡期間中の高血圧症の発症は、「乳製品・野菜」「肉」の二つの食事パターンは、「海産物とアルコール飲料」に比べて高血圧発症リスクが6割以上少ないことが明らかにされました。
今回示されたパターンは、それぞれの食品そのものが高血圧のリスクを低下させたり、高めたりするものではなく、食事の組み合わせが重要です。
小規模なデータからも食事などの複雑な生活行動と健康との関連をAIによる解析によって明らかにできることを示した研究であり、今後さまざまな活用が期待されます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕