脳・心血管疾患は日本人の死因の第2位であり、職場での労働損失の原因疾患としては第3位に位置することが報告されています。
脳・心血管疾患の発症に対して高血圧が関係することは知られていますが、血圧分類はエビデンスの蓄積とともにアップデートされてきた歴史があります。
日本高血圧学会は高血圧治療ガイドライン2019において、新たな血圧分類を提唱しています。
しかしながら、新たな血圧分類と脳・心血管疾患発症の関係を調べた日本の研究はほとんどなく、新たに定められた正常高値血圧の段階から脳・心血管疾患リスクが、どの程度上昇するかははっきりしませんでした。
また、過去の日本の研究は2000年代以前に測定した血圧値を用いた研究が多く、比較的高齢な人を対象とした研究が多いという課題もありました。
近年は救急救命技術の向上や喫煙率の低下といった脳・心血管疾患を取り巻く環境も変わってきています。過去の知見が現在の働く世代に、どれほど適用できるかは不明瞭です。
横浜市立大学医学部公衆衛生学・大学院データサイエンス研究科の研究グループは、企業等に勤務する労働者を対象としたJ-ECOHスタディ(多施設共同研究)のデータを用いて、働く世代における最新の血圧分類と脳・心血管疾患発症との関係を調査しました。
関東・東海地方に本社がある企業等10数社によるJ-ECOHスタディに参加した高血圧の治療中ではない労働者(20〜64歳)8万1876人を最大9年間(2012年4月から2021年3月)追跡調査して、「少し高い血圧」の段階から「軽め高血圧」まで脳・心血管疾患の発症リスクが高まることが確認されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕