奇跡の軌跡11 名前が出ない物書きへの第五歩

「お金にならない仕事をすることはない」というのは二つの意味があります。一つは金銭的に裕福とは言えない状態で稼ぎが少ない仕事をすることへの指摘で、もう一つは仕事としてではなく他の目的で実施することで、これは目先の金額では判断ができないことです。

後半の例としてあげる、私が手がけてきたのは「予算にない仕事」です。

「予算がない仕事」というのは、100万円が必要なのに50万円しか支払えないような状況を指していて、これは普通にも見聞きするし、経験をしてきた人も多いはずです。
それに対して、「予算にない仕事」は、予算の項目にないので支払いのしようがないことを指していて、果たして仕事と呼んでよいのかという疑問も湧いてくることです。

国の機関では決して珍しいことではなくて、新たなことを始めるのに成功の確率が低いと判断されるようなことには予算がつけられません。予算はなくても、実施したほうがよいことは“手弁当”でも実施されるのですが、これを内部(役所の人)ではなく外部に振ってこられることがあります。

そういった仕事にならない仕事は、外部であっても内部の知り合いに回ってくることが多くて、これまでの貸し借りの結果から貸しが多い人(役所側から見て)に振られます。私自身に借りがあるなら「予算にない仕事」を振られても受けるのは仕方がないとしても、私が一緒に仕事をしている人の借りが私に回ってくることがありました。

新たな制度を立ち上げるようなときが大半でしたが、そんな役回りをしてきたことで、霞が関のお役所の関連団体が立ち上がるときに、団体の設立のサポートや機関誌の編集、広報活動の仕事を紹介してもらっていました。

その団体にしてみると、役所の紹介の人間は煙たい存在のようで、広報担当理事が交代すると、私の仕事も終了になるのはよくあることでした。そのたびに霞が関に出向くと、別の仕事を紹介してもらえるということで、2〜3年ごとに別の団体の広報を担当することになりました。そして、最後に受けた団体は13年間も月刊で機関誌の取材と編集の仕事を受けつことができました。

ここでの経験が、のちに食品業界の広報(納豆、豆腐、豆乳)につながることになりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕