偽る脳力40 視覚で脳を騙す方法

脳に飛び込んでくる情報のうち視覚情報は80%を超えているといわれます。人間の五感による知覚の割合を示したデータは多く存在していますが、一般的に使われているのは「視覚83.0%、聴覚11.0%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚1.0%」です。もちろん個人差があり、感覚器の状態や経験、そのときの心身の状態によっても変化してくるのですが、視覚が大きな部分を占めていることについて異論はないはずです。

目で見ること、目から入ってきた情報が判断の大きな材料となっているだけに、「目に見えているものが正しい」という感覚になりやすく、その延長で「見えないものは信じない」という考えにもつながっていきます。

目で見ることができないと信じられないということでは、メディカルダイエットのエネルギー代謝は信じられないことの代表のようなものです。

エネルギー代謝(エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質を材料にして生命維持のためのエネルギーを作り出すこと)は、細胞の中のミトコンドリアという2μm(マイクロメートル)という2000分の1mmのサイズの小器官の中の、通常の顕微鏡では見ることができない世界で起こっていることです。ミトコンドリアは光学顕微鏡では見ることができても、エネルギー代謝が起こっているTCA回路は確認できません。

ましてやTCA回路の中で起こっているエネルギーを作り出すシーンは、電子のやり取りの段階なので、超微細なところまで見える顕微鏡が開発されたとしても見えない世界のままです。

見えない世界を理解してもらうために、イメージ図が使われます。だいたい、こんなことが起こっているということを視覚でわかりやすく伝える方法ではあるのですが、誰も見たことがないことを示すので、見ている人を偽るのは簡単なことです。

ミスリードするための方法としてイメージ図が使われることが多いので、わかりやすく示された図ほど、そのシーンを動画で示すことも疑ってかかったほうがよいということは、テレビ番組でイメージ図を多用してきた側の人間としては強く伝えておきたいことです。

視覚情報に頼って、聴覚情報をごまかすことは、テレビ業界では日常茶飯事に行われていることです。テレビ画面に流される文字情報のテロップは、充分に聞き取れないこと、言葉ではわかりにくいことを端的に伝える方法として重宝されています。

それだけでなく、編集段階で間違いがあったとき、時間的に再度の取材やコメント取りをしている余裕がないときにテロップに手を加えることがあります。テロップで視覚に集中していると、聴覚の能力が低下することを利用しています。

この手法を使えば、事実とは異なることを伝えることもできるので、目的のことに誘導したいときにもテロップは有効に活用されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕