歩き始めたときには、細胞のミトコンドリア内でエネルギー源としてブドウ糖が多く代謝します。これはブドウ糖が、すぐに代謝しやすい性質のエネルギー源となっているからです。ブドウ糖が中心に代謝しているのは10~15分間ほどで、それ以降は脂肪代謝が中心へと切り換わります。
この身体の仕組みから、ブドウ糖を積極的に代謝させて血糖値を下げたいときと、脂肪酸を積極的に代謝させて中性脂肪値を下げたいときでは、歩く時間とタイミングが異なってきます。また、歩く距離やスピードも違ってきます。
ウォーキングは長く歩くことも楽しみの一つですが、短い時間であっても効果的に歩くことで目標に近づくことも、また歩く大きな楽しみとなっています。効果が高まりやすい時間帯には長い距離を歩くのはよいことです。その逆に、効果が高まりにくい時間帯には短く切り上げて、次のよいタイミングに歩くようにすることです。
朝に歩くのと夕方に歩くのとでは、消費エネルギー量が違っています。消費エネルギー量が多いのは、自律神経の交感神経が盛んに働いている昼間の時間です。
ウォーキングの効果は、食事の前なのか後なのかという歩くタイミングによっても異なってきます。空腹時にウォーキングをすると血液中のブドウ糖が少ないために、不足するエネルギーは筋肉の中に蓄えられているグリコーゲンが分解されて使われています。グリコーゲンはブドウ糖が結びついた構造をしています。
このあとに食事をすると、グリコーゲンが使われたあとであることから、肝臓でブドウ糖から合成されるグリコーゲンの量が多くなります。そのため、血液中のブドウ糖の量が減って、血糖値が低くなるほど分泌されるインスリンの量が減ります。
インスリンは、肝臓で脂肪酸を合成させ、その脂肪酸を中性脂肪に変えて脂肪細胞の中に蓄えていく働きをします。そのため、食事の前のウォーキングは体脂肪減少の効果が高いことになります。特に夕食前の空腹時は、自律神経の副交感神経の働きが盛んになっています。
副交感神経がインスリンの分泌を高めるため、この時間帯に運動をすると交感神経に切り換えられて、インスリンの分泌量が減って、脂肪が蓄積されにくくなります。
食事の後のウォーキングは、血液の中にブドウ糖が多い状態で、歩くことによってブドウ糖がエネルギーとして使われれば、血糖値は少し下がります。しかし、食事前の空腹時に比べると効果は低いので、同じ時間のウォーキングをするなら食事の前にしたほうがよいといえます。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕