そこが知りたい13 脂肪を減らした食事で血中脂質が減らない理由

脂肪が多く含まれた食品を食べると血液中の中性脂肪値が高まると指摘されると、では脂肪の摂取を減らせば中性脂肪値が下がることが期待されるところですが、その通りにはいかないという人は少なくありません。
中性脂肪値が高い状態であっても、これといった自覚症状はみられません。しかし、中性脂肪値が高いまま長期間放置しておくと、血管の老化が進み、動脈硬化から心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳血管疾患へと進んでいくことになりかねないだけに、できることなら中性脂肪値を安定させたいと願う人が多いのも当然のことです。

中性脂肪は英語名のトリグリセリド(triglyceride)を訳したもので、酸性、中性、アルカリ性という分類の中性とは関係がありません。グリセリドと呼ばれる脂質1個に、脂肪酸が3個結びついたものです。

中性脂肪は、エネルギーを体内に貯蔵するための形態であり、血液中を流れる脂肪や体脂肪の内臓脂肪と皮下脂肪もほとんどが中性脂肪となっています。血液中の中性脂肪が過剰に増えた状態を高中性脂肪血症といい、中性脂肪とLDL(低比重リポ蛋白)のどちらか、あるいは両方が過剰に増えた状態、もしくはHDL(高比重リポ蛋白)が低い状態を合わせて脂質異常症といいます。

健康な人の血液中の中性脂肪量は50~149mg/dlで、150mg/dl以上を超えると高中性脂肪血症と診断されます。

健康診断で中性脂肪値が高いことを指摘されると、脂肪が多く含まれる食品を減らして、食事で摂取する脂肪の量を減らすように心がける人が多いようです。「脂肪が多いのだから脂肪を減らせばよい」という発想ですが、食事で摂る脂肪を控えれば、血液中の中性脂肪が単純に減るというわけではありません。

食事で摂った脂質は、小腸から吸収されてカイロミクロンとなるため、脂質の多い食事をすると血液中にカイロミクロンが増えます。しかし、カイロミクロンは食事をして数時間で、ほとんどが各組織のエネルギーとして使われます。

中性脂肪の検査は、空腹時(12時間以上は何も食べていない状態)に行われるため、検査で計測される中性脂肪はカイロミクロンではなく、中性脂肪は食事で摂った脂質との関わりは少なくなっています。

中性脂肪値に影響しているのは、食事で摂った糖質です。余分になった糖質は肝臓で脂肪酸に合成されて、その後に中性脂肪となって血液中に放出されます。注意すべきは、ご飯や麺類、パン類、菓子類などの糖質の摂取量なのです。

中性脂肪の肝臓での合成は、アルコールの摂取によっても促進されます。また、肥満の人は、脂肪細胞の中で分解された脂肪酸が血液中に放出され、この脂肪酸を原料にして肝臓で中性脂肪が合成されます。このほかにも、糖尿病、肝臓病、腎臓病、痛風などによっても、高中性脂肪血症になることがあります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕