健康リテラシー29 エネルギー代謝を中心と考える理由

健康を維持するための食事と運動のバランスというと、エネルギー量のバランスが第一に考えられるところがあります。食事による摂取エネルギー量が多ければ太るようになり、運動による消費エネルギー量が多ければやせるようになるといったことです。

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の対策として実施される特定保健指導では、摂取エネルギー量を減らして内臓脂肪を減らすこと、消費エネルギー量を増やして内臓脂肪を減らすことは中心となっています。

このことから見ると、摂取エネルギー量が少ないのはよいことのように思われるかもしれませんが、エネルギー源である糖質、脂質、たんぱく質はエネルギーを材料として、体内で多くのエネルギーを作り出すことが重要になります。

多くのエネルギーが発生すると、その結果として余分な内臓脂肪が使われて健康状態になると考えられていますが、その作り出されたエネルギーは何に使われているのかということに考えを及ぼしてほしいのです。

全身の細胞にはミトコンドリアというエネルギー産生の小器官が数多くあって、その中で作り出されたエネルギーは、その細胞の中だけでしか使われません。他のところに流れていく電気のようなものではありません。

細胞は、それぞれの役割があり、その役割を果たすためにエネルギーを使って生化学反応を起こしています。エネルギーが多く発生することによって細胞の働きが盛んになり、細胞一つひとつから健康になっていくことができます。

太っていることによって身体の状態がよくないときには、内臓脂肪が多いことによって不都合なことが起こっているということもあるものの、それ以上にエネルギーが多く作り出されていないために細胞レベルから正常な働きをしていないということです。

メタボリックは代謝を表していて、シンドロームは症候群の意味であるので、メタボリックシンドロームは内臓脂肪症候群というよりも代謝低下症候群と呼ぶべきです。そして、代謝が低下していることが問題であるので、多くのエネルギー源を摂って(多く食べて)、運動をして多くのエネルギーを発生させるのが重要だということがわかってきます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕