偽る脳力56 外孫の役割

母方の従兄弟は5人いますが、その中で母の実家の寺で生まれたのは私だけです。事情があって2歳のときから3年間、また寺で暮らすことになりましたが、母は3姉妹の次女で、長女の夫は公務員を務めながら将来的には寺を継ぐことになっていたので、私は外孫です。

そのために自分から興味を示すまでは、朝のおつとめの読経も寺の行事も強要されることはなく、有り余った時間を気軽に過ごしていました。

小さな寺であったので、他の宗派の寺が運営している保育園に通いましたが、それも集団生活を経験してみるのもよいだろうという祖父の考えで、少しだけ体験入園のような感じで、まさに経験しただけでした。

普段は外孫であることを意識することはなかったものの、寺の行事があるときには内孫の従兄弟も親とともに参加していて、そのときには役割の違いを感じていました。寺の行事は後を継ぐ人がメインで、本堂での位置も来客の接待などの役割も明らかでした。

それに対して外孫は、どうしてもやらなければならないことではないものの、やってくれたら助かるという程度の役割で、寺に続く長い石段の掃除や履き物の整理、台所の手伝いといった隙間の仕事を、誰に言われるわけでもなくやっていました。

隙間を見つけて、つなぎ役に徹して、自分の役割を探していく姿勢は、子どものころに刻まれたことで、それが学生時代も社会人になってからも自分の行動を決める判断材料になりました。

素晴らしい仕事先であっても、自分の役割がなければ参加することはできないのですが、隙間に徹することで参加が可能で、その隙間が困っていることや誰もやってくれないことだと喜んで迎え入れてくれます。

新たなことに参加しようとする人の中には、これまでのメンバーをライバルと考えたり、取って代わろうとする人もいるのですが、それでは受け入れてもらえない、弾き出されることにもなります。

新たな人材を呼び込もうとする企業や団体、自治体や地域などでは、やってきた人材が既存の人の仕事を奪うようだと、初めは親切に接していても徐々に冷たく接するようになり、最後は追い出そうとして、その人が持っている能力や実績だけをいただこうということも起こります。

そのような苦い経験をした人を数多く見てきただけに、決して追い出されない仕事を始めること、新たな仕事を作り出すことに力を注いできました。

その成果の一つが、病院栄養管理のHDS研究所で他の誰も気にかけなかったサプリメントの研究で、厚生労働省が保健機能食品等のアドバイザリースタッフ制度の委員会に研究所の先輩とともに呼ばれることになりました。

サプリメントは臨床栄養の敵だと考えて委員を降りたときに私だけが残ることになり、そこで知り合った国立健康・栄養研究所の理事長から同研究所がアドバイザリースタッフの資格認定講習を始めるときに法律講師として招聘されるきっかけにもなりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕