偽る脳力62 糖質制限の偽り

「糖質制限」は制限という用語が使われているので、絶対に糖質を摂ってはいけないという意味ではないはずなのに、すべての糖質を避けるような指導をする専門家がいます。制限は、ここまでは許せるという限界点を決めて、その範囲内に収めることを指しています。糖質制限も同じ意味で使われて指導されていれば問題が起こるようなことはありません。

その本来の意味とは異なる指導をするのは医師が多く、栄養学を学んでいれば「絶対にダメ」という乱暴なことは間違っても言うことはできません。医学レベルの栄養学を学んでいる管理栄養士であっても、医師の言うことを信じきって、患者に無理強いをしている人がいないわけではありません。

日本の場合は、医師になるための大学教育では栄養学が学べない環境のほうが多く、栄養学講座があっても栄養不足による疾患について学ぶことが中心で、栄養素のプラス効果について学んでいるわけではありません。

専門家ほど断定的なことは言えないというのは多くの医師が口にすることですが、栄養の摂取については平気で断定的に発言することがあります。それは「自分は専門家ではない」と言っていることと等しいのですが。

糖質制限をすすめる医師の中には、「必須がついていないから必須ではない」ということまで言う人がいます。「三大栄養素のうちアミノ酸にも脂肪酸にも必須がついているのに、ブドウ糖には必須がついていない」ということを根拠としていますが、これは正しい意味を知ってから知らずか偽った言い方です。

アミノ酸には必須アミノ酸と非必須アミノ酸があり、脂肪酸にも必須脂肪酸と非必須脂肪酸があります。体内では合成されないために食事で摂る必要があるアミノ酸と脂肪酸に必須が付けられています。

ブドウ糖は必ず必要であるので、あえて必須ブドウ糖という必要がないのに、その事実を隠して「必須がついていない〜」ということを言うのは、専門家ではないからの発言と言えます。

ブドウ糖は血糖とも呼ばれていて、ブドウ糖の摂取が多くなると血糖値が上昇します。糖尿病は血糖値で判断されるので、ブドウ糖が多く含まれる糖質を制限すれば血糖値が下がって一見すると糖尿病でないのと同じような状態になります。

しかし、あくまで見た目の状態であって、膵臓からインスリンが多く分泌されなくなり、インスリンの分泌の割には血糖値が下がらなくなったのが糖尿病の本質です。そのことを伝えずに、自分に主張ばかりをするのは、これは偽りの態度です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕