偽る脳力70 筋肉が多いほど太りにくい

ミトコンドリアの数が多いのは多くのエネルギーが必要な肝臓、脳、筋肉などの細胞だということを先に紹介しました。消費エネルギー量は筋肉が約20%とされていますが、これは体重が60kgの中肉中背の人を想定してのことで、筋肉量が多い人、運動などによって鍛えている人は、もっと多くなっています。

心臓でも約7%のエネルギーが消費されていますが、心臓は心筋という筋肉で動いていて、1日に10万回ほど拍動を繰り返しているので、立派な筋肉です。心筋を加えると平均でも約27%と肝臓と並ぶ消費エネルギー量であるので、筋肉が最もエネルギー消費が多いということになります。

筋肉の量は年齢を重ねると増えにくく、身体活動が低下すると減っていくことから、中高年以降では運動をしても効果がないように言われることがあります。しかし、そんなことはありません。筋肉を構成する筋繊維は生まれたときから数は変わりません。

ということは筋繊維の数は運動をしても増えないということですが、負荷をかければ太くなり、強くなっていきます。筋肉が太くなるということは、それだけエネルギーを多く作り出す能力が高まっていきます。

筋肉を刺激して強化すれば、たとえ高齢者であっても増やすことができるということです。ただし、筋繊維にタンパク質を吸着させる酵素の量は加齢によって減っていって、運動の効果が現れにくくなっているのは事実です。そのため、毎日の地道な運動を習慣化させることが年齢を重ねるほど大切になってくるということです。

筋肉が増えるとエネルギー代謝が高まってきますが、これは筋肉での消費量が増えるだけではありません。筋肉の中で脂肪を分解して、エネルギー化させやすくする脂肪分解酵素のリパーゼは筋肉の量に比例して多くなっています。

リパーゼは胃から分泌される脂肪分解酵素ですが、消化で使われた後には小腸から吸収され、筋肉に運ばれて、ここで定着します。簡単に表現すると、脂肪の燃焼工場に、燃えやすくする化学薬品が多く蓄積されているようなイメージです。

筋肉が多い人ほどリパーゼが多くなっていて、脂肪を分解して代謝させやすいので太りにくくなります。そして、筋肉が少ない人ほどリパーゼが少なく、脂肪が分解しにくく、太りやすいということが言えるわけです。

筋肉には脂肪酸をエネルギー化させる赤筋と、ブドウ糖をエネルギー化させる白筋があります。赤筋は有酸素運動によって太くなり、脂肪の代謝が高まっていきます、赤筋を太くするためには、有酸素運動が有効になるので、歩く、走るといった運動を中心にする必要があるわけです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕