日本人は、以前は肉をあまり多く食べてこなかったのは事実で、終戦後の調査(1947年/昭和22年)と比較すると現在では摂取量(重量)では6倍にもなっています。その当時の日本人は健康度では平均寿命は短く(男性は初めて50歳を突破)、これは感染症(結核や肺炎など)が多かったことも関係しています。
伝統的な食事から徐々に洋風化していく中で健康度が高まり、平均寿命が延びている中で、生活習慣病(当時は成人病)は今ほど多くはなくて、このまま進むと“健康長寿”が実現できるのではないかと期待が高まっていきました。
日本人の平均寿命は今では世界一を誇っていますが、平均寿命が延びるにつれて、もう一つの“寿命”の延びが問題とされるようになりました。それは「健康寿命」で、医療や介護に頼りきりにならずに自由に活動できる期間(平均寿命との差)は、男性が約9年、女性が約12年にもなっています。
この状態は、果たして健康長寿(健康で長生き)と言えるのか、という議論が高まってきたときに言われるようになったのが「高齢者は肉を食べろ」ということでした。それまでは肉食の増加による脂肪摂取が生活習慣病を増やし、中でも獣肉に多く含まれる飽和脂肪酸が血中コレステロールを増やして動脈硬化の原因となるということで、高齢者は肉を減らした粗食がすすめられる状況がありました。
それが一転して肉食がすすめられるようになったのは、日本の高齢化が大きく進む中で、血管の健康を守ることと、筋肉の減少を防ぐことが重要であると考えられるようになってきたからです。血管の材料も筋肉の材料も、たんぱく質です。
人間の細胞は動物性たんぱく質であることから、動物性たんぱく質の肉、魚、卵、牛乳・乳製品の摂取がすすめられました。その中でも効率がよいたんぱく源として肉が代表的にあげられるようになりました。
長生きのためには肉を食べるのがよいとしても、飽和脂肪酸は動脈硬化の要因となりやすく、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、飽和脂肪酸の量を減らすことが示されています。
摂取する総エネルギー量のうち脂肪からは20〜30%で、そのうち飽和脂肪酸は7%以下とすることが推奨されています。ちなみに同じ肉であっても飽和脂肪酸の割合は違っていて、鶏肉は3.8%ほどで、豚肉は13%ほど、牛肉は肩ロースが12%ほどです。ただし、リブロース(脂肪つき)は25%を超えています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕