脳トレのテキストは、書籍でも雑誌でも数多く提供されています。テスト形式の記憶系のものや塗り絵などの創造系など、さまざまなタイプが提供されていますが、売りたい気持ちが強すぎるのか、「これさえやれば大丈夫」といった飾り表現がされています。
実際に、テキストとして出されている脳トレ問題をやってみて、どれくらいの効果があったのか、ということは語られていません。脳トレを必要とする人は、「現在の認知機能を維持したい」という人から、「記憶に自信がなくなってきたから今のうちに何とかしたい」という人、「認知機能検査を受けたら軽度認知障害と診断されたから止めたい」という人まで、さまざまです。
軽度認知障害は認知症の予備群と呼ばれる状態ですが、軽度認知障害は5年以内に50%ほどが認知症に移行しています。しかし、30%ほどは軽度認知障害のままで経緯して、20%ほどは正常な状態に戻ることができるとされています。
この20%に期待して、もしくは年齢を重ねても軽度認知障害のままで過ごせるなら良しとして、認知機能の維持・向上に取り組んでいこうと考えて、脳トレに取り組む人が多いのです。
脳トレの内容が、若い健常者なのか、高齢の健常者なのか、高齢といっても何歳なのか、軽度認知障害の人なのか、それとも認知症になった人なのか、そこのところがわからないと、脳トレの効果のほどを知ることができず、やってみて、どれくらいの結果になるのかも見えてみません。
それでも何もしないよりはいい、とにかく健脳のために頼ってやり続けようというのでは、「ひょっとして気のせいかもしれない健康食品」を摂り続けている人と同じことになってしまいます。健康食品の中でも効果がありそうなものは“機能性食品”とも呼ばれています。
機能性(きのうせい)から「うの字」を抜いたら「きのせい」になり、これが“気のせい食品”と揶揄されることにもなっています。脳トレに頼りっきりになっている人は、“気のせい食品”のことを笑うことはできないはずです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕