偽る脳力71 代謝低下は代謝促進成分の不足が原因

同じ食事量、同じ運動量にしていても、年齢を重ねていくと徐々に太っていくのは代謝が低下するためです。これは加齢の当たり前の出来事で、これを改善するには食事を減らすか運動を増やすしかない、というのが一般的な認識かもしれません。

しかし、なぜ代謝が低下するのかがわかれば、食生活を変えずに、運動も変えずに身体を若い状態に戻していくことも可能です。

その役割をしているのは代謝促進成分のL‐カルニチンです。L‐カルニチンと聞くと、ダイエットを目的とした健康食品の成分を思い浮かべる人が大半かと思いますが、エネルギー代謝の重要な成分で、これが不足するとエネルギー産生が低下します。運動をしても体脂肪が減らない、パワーが出ないというのは、L‐カルニチンが不足した状態が続いている証拠とされます。

L‐カルニチンがメディアで盛んに取り上げられたのは2000年くらいからで、そのときには羊肉(マトン、ラム)を食べると太りにくいという話題が中心となっていました。そのメディア広報の一角を私も担っていたのですが、「羊肉を食べると太らない」という表現をするメディアがあって、これにはストップをかけるように動いていました。

L‐カルニチンは細胞のミトコンドリアに脂肪酸を通過させるために必要な代謝促進成分で、L‐カルニチンなしで通過できるのは中鎖脂肪酸だけです。体内で合成されるものの、合成のピークは20歳代前半で、それ以降は合成量が減るために脂肪酸がミトコンドリアに充分に取り込まれなくなることから、年々太りやすくなっていくわけです。

L‐カルニチンの材料となっているのは必須アミノ酸のリシンとメチオニンです。必須アミノ酸は肉、魚、卵、乳製品、大豆・大豆製品にバランスよく、豊富に含まれています。年齢を重ねるとL‐カルニチンの合成量が低下していくので、合成のために必要になる3種類のビタミン(ビタミンC、ナイアシン、ビタミンB₆)、ミネラルの鉄を摂ることがすすめられます。

代謝に必要なL‐カルニチンが、すべて体内で合成されるわけではなく、全体の3分の1ほどです。残りの3分の2ほどは食品に含まれているL‐カルニチンが使われています。しかし、これは肉食の消費量が多い欧米人でのデータです。L‐カルニチンは羊肉(特にマトン)、牛肉に多く含まれているので、豚肉や鶏肉では不足します。羊肉や牛肉の摂取量が少ない人は不足しがちで、体内の合成に頼ることになります。

L‐カルニチンは以前は医薬品の成分でしたが、2002年に厚生労働省から食品の成分としても許可されたことから、サプリメントでも摂ることができるようになりました。サプリメントとしてのL‐カルニチン研究の第一人者の王堂哲さんは、日本メディカルダイエット支援機構の副理事長です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕