偽る脳力75 スポーツ選手は長生きできない

運動をすることは健康の維持・増進のための必須要素とされていることから、運動をする機会が多いほど、負荷の高い運動をするほど、運動に欠ける時間が長いほど健康になれるという印象が抱かれがちです。

その一方で、運動をすること、スポーツは平均寿命を短くするという考えもあり、「スポーツ選手は短命」「スポーツをしないほうが長生き」という考えを主張する人も増えてきました。スポーツ全体をいけないというのではなく、どんなスポーツのリスクが高いのか、どの程度の運動量なら安全なのかということは、あまり言われてはきませんでした。

これまでの研究では、国立大学の卒業生の追跡調査で、文化系学部の卒業生に比べて体育系学部の卒業生の平均寿命が10年ほど短いという結果が長らく使われてきました。

また、競技別では陸上(中長距離)、剣道、ボート、ゴルフ、ラグビー、柔道、水泳、スケート、陸上(短距離)、登山探検、馬術、サッカー、射撃、野球(プロ)、体操、レスリング、ボクシング(プロ)、自転車、相撲(プロ)の順で、そのうち当時の男性の平均寿命を超えていたのは水泳より上の7種目でした。

スポーツの種目別の平均寿命についての新たな研究成果が発表されたのは、私が岡山に移住した1年後のことで、日本ワールドゲームズ協会の事務局を務めるスポーツ財団からコメントを求められました。

私が理事を務めていた公益財団法人日本健康スポーツ連盟の理事長が、日本ワールドゲームズ協会の副会長を務めていた関係から、東京にいたときにスポーツと平均寿命について調べていて、そのことが知られていたからです。

それは2018年に発表された運動習慣のある人と運動習慣のない人の比較調査の結果で、スポーツ種目によって平均寿命の差があることが発表されていました。それはコペンハーゲン調査と呼ばれていて、デンマークのコペンハーゲン市に在住する成人8577名をデンマークとアメリカの研究チームが25年にわたって追跡調査したものです。

その中で示されたのは、寿命を延ばすスポーツとしてテニス(9.7年)、バドミントン(6.2年)、サッカー(4.7年)、サイクリング(3.7年)、水泳(3.4年)、ジョギング(3.2年)、健康体操(3.1年)、スポーツジム(1.5年)でした。

数字は平均寿命よりも何年長生きかを示したもので、無理がかからないスポーツ、有酸素運動は健康効果が高いことを示しています。スポーツ選手は長生きだという証拠だという、これまでとは違う結果となっています。

日本人と欧米人は体質が異なると常に言っていて、その証拠として日本人のデータが出せないことには自分自身への不満もあるのですが、このような調査はまだ実施されていなくて、少しでも関係する調査結果がないものかと日々、情報検索を続けています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕