そこが知りたい17 寝だめはできるのか

「食いだめ」はできても「寝だめ」はできないということは以前から言われています。
これについては、いくつかの見解があるのですが、最もよい内容として使用されることが多いのは厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」です。

この中から、成人版の「睡眠時間の確保について」をピックアップして紹介します。

〔休日の「寝だめ」の問題点〕
平日の睡眠不足(睡眠負債)を、休日に取り戻そうと長い睡眠時間を確保する「寝だめ」も習慣がある人は少なくありませんが、このような習慣で、実際には眠りを「ためる」ことはできません。

国際的には週末の眠りの取り戻し(Weekend catch-up sleep)と呼ばれ、毎週末(休日)に時差地域への旅行を繰り出すことに類似していることから、社会的時差ボケ(SocialJetlag)とも呼ばれます。

社会的時差ボケは、慢性的な睡眠不足による健康への悪影響と、頻回に体内時計のずれが生じることによる健康への悪影響の両側面を有しており、肥満や糖尿病などの生活習慣病の発症リスク、脳血管障害や心血管系疾患の発症リスク、うつ病の発症リスクとなることが報告されています。

さらに、休日の寝だめでは、平日の日中の眠気は完全には解消できず、メリットは極めて限定的との報告もあります。

40〜64歳の成人を対象とした近年の調査では、平日6時間以上寝ている人に限り、休日の1時間程度の寝だめは寿命短縮リスクを低下させることが示されていますが、平日6時間未満の人は、休日の寝だめをしても寿命短縮リスクが有意に高まります。

ただし、平日6時間以上寝ていても、休日に2時間以上の寝だめの習慣がある人は、寿命短縮リスクが軽減されないことが報告されています。

休日に長時間の睡眠が必要な場合は、平日の睡眠時間が不足しているサインであり、平日に十分な睡眠時間を確保できるよう、睡眠習慣を見直す必要があります。

さらに、寝だめのために休日の起床時刻が大きく遅れると、体内時計が混乱し、時差地域への海外旅行と同様の時差ボケが生じる結果、健康を損なう危険性が生じると考えられます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕