偽る脳力94 明日できることを今日するな

「明日できることを今日するな」というのは一見すると著名な諺(ことわざ)のようにも思えるかもしれませんが、そのような諺はありません。言いたいことを伝えるために、逆説的に使うようにしています。

諺のように使われているのは「今日できることを明日に延ばすな」で、今日すべきことを明日にしようと先延ばしをしていると、翌日も同じことを繰り返したり、その日に別の用事が入るなどして、いつまで経ってもできないということを指しています。

“諺のように”と書いたのは著名人の名言だからです。

原典は「Never leave that till tomorrow which you can do today」で、アメリカ建国の父と呼ばれるベンジャミン・フランクリンの言葉です。ベンジャミン・フランクリンというと、「Time is money」のほうが有名で、「時は金なり」と訳されています。

自分の時間をお金に変えるアルバイトでもサラリーマンでなくて、「時間はお金と同じで貴重なものだから無駄にするようなことがあってはいけない」という戒めです。

ところが、自分の時間どころか、他人の時間も大事に考えない人も少なくありません。このことについては先に「時間泥棒」という言葉を使って書いてきましたが、「今日できることを明日に延ばすな」とは逆のこととして「明日できることを今日するな」という言葉を使っているのは、私の大事な時間を蔑ろにした人に気づいてもらいたいからです。

このことを発しても、時間泥棒と同じで、気づいていない人がほとんどです。

「明日できること」は、無理をしてでもやっておかなければならないことではなくて、明日でも明後日でも変わりがないことで、それを先にやらせようとしている人に対して伝えようとして使っています。

1日にできることというのは、物理的には時間の余裕さえあればできることであっても、精神的・心理的な面では集中してできない、実施するためには相当の気力を使うということでは長続きできなくなります。

継続してこそ効果がある、成果があげられるということなのに、あまりに急いでやらせようとするとタイムスケジュールはこなせたとしても、実質が伴わない“質が低い”仕事になってしまうことにもなります。質が伴わないことは、一つひとつでは影響を与えるようなことはなくても、積み重なっていくと大きなズレにもなりかねません。

何もかも先延ばししてよいということではなくて、「明日できること」を選択して、それを実施するまでの時間に再考する、他の方法がないかということも考えることができます。その意味を込めて「今日するな」と言うようにしているのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕