偽る脳力98 微表情を見抜く脳力

新型コロナウイルス感染症が蔓延していた3年間はマスクをしなければ他人と接触できないことから不自由を強いられましたが、この期間は偽らないで済む期間と感じることもありました。

閃輝暗点と視聴不一致から目の前にいる人の顔を見るのが辛いこともある自分にとっては、相手の口元を見ないで済むことも、相手から表情を読み取られないで済むことも、精神的には非常に楽な状態でした。

表情を見抜かれないで済む一方で、表情を見抜くことができないことは対人関係では辛い時期でもありました。それは見抜かれることの何倍も、見抜くことに力を注いできたことがあり、それがマスクによって妨げられることで、表情から考えていることが見抜けないことで失敗することが続きました。

そのようなことで相手の本心が見抜けなくなるようでは観察眼が足りないと言われることもあるのですが、脳科学を学び始めたときから、ずっと微表情(微細な表情の変化)によって本心を見抜くことを心がけ、それによって人間関係を作り上げてきたことから、それに頼りすぎていたところがありました。

微表情は、感情が顔に一瞬のうちに表れて消える表情のことを指していて、0.2秒以内の出来事です。その微表情は90%以上が見逃されているとされます。

どのような表情なのかというと、幸福(ほころぶ口元)、軽蔑(非対称な口元)、嫌悪(鼻の周りのしわ)、怒り(力んだ唇)、悲しみ(あごのしわ)、恐怖(下まぶたの緊張)、驚き(あんぐり顔)で、これらの万国共通で表されているのは7つのサインと呼ばれています。

この微表情のおかげで、腹の底が見えにくい政治家、役人、団体役員などとも、なんとか付き合ってくることができました。

微表情は隠そうとしている真実の感情が表れて、短時間で無意識に生じる表情であり、本人には露出しているかがわからないことから、相手の隠している感情を知る手がかりとして効果的です。

ところが、微表情によって嘘を見抜くことはできても、本人に嘘をついている意識がない、自分としては悪いことをしているつもりがないという人は微表情が表れにくいことがあります。また、まとまりのない思考や行動をしていても、本人としては特に変えていないつもりでいる場合にも表れにくく、見抜きにくくなっています。

微表情を見ることができることを知られると、心の底を見抜かれるようで付き合いにくい、できれば付き合いたくないという感情があるのは承知しています。微表情について口にしないほうが付き合いやすいことをわかっていながらも、あえて書き記したのは、そのことを隠して、偽って過ごす脳力が自分には備わっていないと考えているからです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕