運動ガイド6 成人版:科学的根拠

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の成人版の推奨事項の「科学的根拠」を紹介します。

〔科学的根拠〕
推奨値については、成人を対象にしたコホート研究をレビューした結果、生活習慣病発症予防に効果のある身体活動量の下限値が週19メッツ・時から週26メッツ・時の間に分布しており、その平均値が週23メッツ・時であること、及び日本人を対象とした研究に限ったメタ解析においても、週22.5メッツ・時より多い人で効果が期待できると確認されたため、身体活動量の推奨値を週23メッツ・時としています。

また、運動については、生活習慣病発症予防に効果のある運動量の下限値が週2メッツ・時から週10メッツ・時の間に分布していたことから、その平均値である週4メッツ・時を運動量の推奨値としています。

本ガイド策定に向けて最新の研究をレビューしたところ、過去のレビュー結果と同様な傾向を確認したことから、推奨値の変更は必要ないと判断しました。

身体活動と生活習慣病発症や死亡リスクの間には、身体活動量が多いほど、疾患発症や死亡リスクが低いという関係がみられ、特に週23メッツ・時程度まで大きなリスク低下が期待できます。

また、1日あたり10分の身体活動を増やすことで、生活習慣病発症や死亡リスクが約3%低下すると推測されています。また、運動量と生活習慣病発症や死亡リスクとの間にも同様の関係がみられ、週4メッツ・時を満たす場合、生活習慣病発症や死亡のリスクが約10%低いことが示されています。

“やりすぎ”の身体活動量はまだ明らかではありませんが、怪我や体調に注意して無理をしないことが大切です。

座位時間と死亡リスクの関係を検討した34件のコホート研究のメタ解析では、座位時間の増加に伴い死亡リスクが増加することが方谷されています。

一方、1日60分以上の中強度以上の身体活動によって、座位行動による死亡リスクの低下が期待できることや、長時間の座位行動をできる限り頻繁に(例えば、30分ごとに)中断(ブレイク)することが、食後血糖値や中性脂肪、インスリン抵抗性などの心血管代謝疾患のリスク低下に重要であることも報告されています。

また、強度を問わず、少しでも身体を動かすことが健康によい影響を及ぼすことが報告されています。立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かすことを推奨します。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕