ファスティングという言葉のあとに、ダイエットが続くことが多くみられます。ファスティングの効果としてダイエット効果は比較的早い段階で得られるもので、ダイエットは健康面、美容面でも好結果を生み出しやすいだけに、ファスティングの目的としてダイエットを掲げる例も少なくありません。
ダイエットというと、一般にはやせること、やせるために食事を減らすことだと考えられがちです。ダイエット(Diet)の元々の意味は方針、政策、作戦、戦略といったことで、国の方針を決めて実行させる国会は英語では「The Diet」と表記されます。日本の国会議事堂は「National Diet building」で、地下鉄の国会議事堂前駅は「National Diet bldg.」と表記されています。
正しい方針に基づいて実施するのがダイエットであり、そこから転じて正しい食生活をすることがダイエットとなりました。また、健康維持のために運動をすることもダイエットという言葉が使われるようになりました。
栄養過多や運動不足によって太った人が体脂肪を減らして健康的になることがダイエットだけでなく、標準よりもやせすぎている人が健康維持のために体脂肪を増やすこともダイエットの一つだということになります。
少なくとも無理をして、健康を害してまでやせようとすることは、本来の意味のダイエットではないことになります。無理をして食事量を大きく減らした状態が長く続くと、健康状態を維持するために胃腸での消化、吸収が高まり、肝臓での脂肪合成も進むようになります。
また、脂肪細胞に蓄積された中性脂肪を分解されにくくして、なかなかやせにくいという状態になります。そのために無理なダイエットや身体に負担をかけすぎるダイエットはリバウンドを起こしやすくなります。
ファスティングのあとに続くダイエットは、もちろん健康的な方法でなければならず、ファスティングを実践した結果として、より健康体になるものでなければ意味がないことになります。
ファスティングによるダイエットの基本となるのは食事量を減らすことによる体脂肪の減少が本来の目的ではありません。食事を2〜3日ほど食べなくても、思ったよりも体重の減少は多くはありません。
脂肪は1gで約9kcalのエネルギー量があります。体脂肪の約20%は水分であるので、体脂肪1kgは約7200kcalとなります。1日に摂取するエネルギー量の平均は男性で約2400kcal、女性で約2000kcalとなっています。
男性では7200kcalは3日分のエネルギー量になり、女性では3.6日分のエネルギー量になります。3日ほど飲まず食わずの状態で消費されるエネルギー量であるため、3日間のファスティングの実施で減らすことができる体脂肪は1kgほどでしかないことになります。
これ以上に体重が落ちたとすると、体脂肪ではなく水分が大きく減っていることが考えられます。
体内の水分量は成人では60〜65%となっています。1日の水分の排出量は尿から約1200ml、便から約100ml、皮膚から約600ml、呼気から約400mlと、合計で約2300mlの水分が失われています。
この水分を通常では飲み物から約1500ml、食事から約600mlが摂られています。
この他に体内におけるエネルギー代謝によって二酸化炭素とともに作られる代謝水が約200mlと、水分の出入りの量はバランスが取れています。
水の1000mlの重量は約1kgとなっています。水分の摂取を控えるだけでも摂取する水分が減ることになります。体重の増減に一喜一憂するのではなく、体脂肪の変化に注目することが大切です。
ファスティングによるダイエットは、これまでの食生活によって乱れた腸内環境を正常な状態に整えることによって消化、吸収に続く排泄をスムーズに行わせることであり、腸内細菌の善玉菌を優位にさせて悪玉菌が作り出す毒素(有害物質)を減らすことが一つの目的です。
また、毒素に加えて、食事とともに体内に入ってきた有害物質を体外に排出するデトックスによって、全身の細胞の働きを正常にさせることも大きな目的の一つです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕