ファスティングによってダイエットができるメカニズムとして、食べない期間が続くことによって胃が小さくなることがあげられています。これを理由としてあげているところも多くなっています。胃は伸び縮みしやすい臓器で、食事の量によって容量は大きく変化します。そのことが、胃が小さくなる理由と考えられる要因となっています。
食事をせずに胃に何も入っていない状態では通常では100ml程度となっています。これはコップの半分ほどの容量です。食事をすると胃は拡がり、食事の量に合わせて通常では1500mlにもなります。これは大型(2000ml)と中型(1000ml)のペットボトルの中間くらいの容量になります。
空腹状態で100mlというサイズは最小のサイズで、食事を何日もしていない状態が続いたとしても、これ以上に小さくなることはありません。ずっと少食の生活を続けていると胃のサイズは100mlほどにしか拡がらなくなるということはあるものの、これが50mlほどにも小さくなって、多くの量が食べられなくなるということはありません。
これとは逆に大食を続けていると胃が拡がりやすくなり、2000mlを超える量でも胃に入れられるようになっていきます。
これは飢餓状態が長く続いた時代に身体に備わった生存のための機能です。何も食べられない状態のときに食べ物に巡り合ったら、限界まで胃の中に詰め込んで、栄養補給をするのは生き残るために必要なことです。そのために胃のサイズが限界まで大きくなるようになっていったと考えられています。
少ない量の食事でも満腹感が得られるのは、胃の大きさが関係しているように思われがちです。食べたものによって胃が内側から圧迫されて、これによって多くの食事を摂ったことを感じられるようになりますが、これは満腹感を得る一つのメカニズムでしかありません。これ以上に満腹感に影響しているのは、脳の満腹中枢の反応です。
満腹中枢は血液中のブドウ糖の量を反映する血糖値に反応します。血糖値が高くなる状態、つまり血液中のブドウ糖の量が多くなった状態では、満腹中枢が早く働くようになり、これ以上は食べられないという食欲の抑制が起こります。
この満腹中枢の働きは、通常の食事量で、血糖値が急上昇しない状態で正常に行われるようになっています。ところが、食べすぎによって満腹中枢が刺激される期間が長くなると、満腹中枢の機能が低下しやすくなります。
食事量を減らして胃が小さくなったとしても、満腹中枢が正常に反応しなければ、なかなか満腹感を得ることができなくなります。そのために、ついつい多くの量を食べてしまうことにもなります。
ファスティングをすることによって、血糖値の急上昇を抑えることによって脳の視床下部にある満腹中枢の感覚の乱れが改善されると、通常の食事量でも満腹を感じやすくなります。ということは、胃が満腹状態になるまで食べなくても、脳が満腹を感じるようになり、満腹状態と同じような感覚が得られるようになります。このようにして、自然と食べる量を適量に抑えることができるようにするのが、ファスティングのダイエット効果です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕