健康リテラシー32 “糖質制限”との戦い1

糖質制限は、「ダイエットの決定的な方法で、糖尿病の治療にも効果がある」ということが広まっています。その理由というか裏付けは医師からも説明されていて、「糖質制限によって血糖値を正常に保つことができる」ということです。

糖質制限は医師によって、糖尿病を治すことができる方法として報告された、というのが広く知られていることです。糖尿病の診断は、まずは血糖値によって判断されます。血糖は血液中のブドウ糖のことで、その量を示したのが血糖値です。

血糖値が「mg/dl」で示されるので、1dl(デシリットル)中に含まれるmg(ミリグラム)の量のことで、空腹時(通常は朝食前)で126mg/dl、食後2時間で200mg/dlを超えると糖尿病の診断値とされます。

血糖値は糖質の中のブドウ糖の量だけを測定したものですが、これは糖尿病に関わる膵臓から分泌されるインスリンがブドウ糖に反応していることと、全身の細胞が取り込んでエネルギー化させているのがブドウ糖であることと関係しています。

そのため、血液中のブドウ糖の量が減って、血糖値が正常値まで低下すれば糖尿病ではないことが示されます。このような状態にするために、最も簡単な方法はブドウ糖が含まれる食品を大きく制限するか、そのような食品を飲食しないことです。

その方法が糖質制限で、糖質を極端に制限すれば(場合によっては完全に摂らないようにすれば)血糖値を糖尿病ではない状態に下げることができます。これをもって「糖尿病が治った」としている人(中には医師も)がいるのですが、それは事実なのか、といったことを考える必要があります。

ブドウ糖はエネルギー源の一つで、この他にエネルギー源となるのは脂肪酸とアミノ酸だけです。ブドウ糖を摂らなくても、他のエネルギー源が使われていればよいのですが、脳細胞だけはブドウ糖以外はエネルギー源とはなりません。

その理由ですが、脳と、脳につながる血管の間には血液脳関門というゲートがあって、ここを通過できるのはブドウ糖だけで、脂肪酸もアミノ酸も通過できない仕組みになっているからです。

脳を正常に働かせるためには、1日に120gは必要とされています。最もブドウ糖の割合が高いのは砂糖で、「ブドウ糖1:果糖1」の割合になっています。脳のエネルギー不足は脳の働きを低下させるだけでなく、脳が全身をコントロールしているので糖質なしでは健康を維持することはできないのです。

これが事実であるのに、いまだに厳しい糖質制限によって糖さえ摂らなければ健康になることができるという医師がいることに対しては、放置されているところがあります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕