欺瞞錯誤7 生放送の台本

テレビ番組では、まったくのフリートークということはなくて、アドリブで話をしているようなことであっても、台本は存在しています。録画を放送する場合であれば、フリートークやアドリブであっても、後で編集をすることができるので、台本どおりに話さなければならないというプレッシャーは少なくなります。

これに対して生放送となると台本は重要で、時間内に放送すべきことは詰め込む必要があり、生放送はフリートークもアドリブもあり、という一般の認識とは逆のことが起こっています。

出演者は台本どおりに話すことが求められていて、台本から外れたことを話すと、MCなりアナウンサー、アシスタントなりにインカム(イヤフォンとマイクを会話できるシステム)で、台本に従った発言をするか、発言を変えさせるように指示が入ります。

これは台本に書かれていることが正しい内容、伝えることが社会的に意義のあることであればよいものの、商品やサービスの宣伝行為、誰かの主張なり意見なりを放送を通じて示すことが目的であったりすると、台本どおりに話すことを求められるというのは抵抗感があることになります。

生放送は“ぶっつけ本番”という印象があるものの、リハーサルが行われ、リハーサルの通りに話すことが求められることがあります。アドリブやギャグを言うことが許されていないわけではなくても、それはリハーサルの場だけで、本番ではリハーサルどおりに話をするというのは公共放送の場合の話です。

つまり、リハーサルの内容が、新たな台本の内容となり、その内容どおりに放送するのが正しいこと、ということになります。

ニュースの形式を使ったバラエティ番組の場合には、出演者は知っていることであっても、知らなかった、初めて聞いたというふうに演じることも必要になります。そのために、他の番組では知っていたことなのに、次の番組では知らないことにする、もしくは忘れてしまったことにするということも当たり前のように起こります。

これがクイズ番組となると、知っていることは知っている、知らないことは知らないという“ガチ勝負”と思われがちです。ところが、最近のクイズ番組は、問題や解答が商品やサービスの販売に関わるものが挿入されることが増えてきていて、スポンサーの意向に合わせて、知っていることなのに知らないことにするのも実際に起こっていることです。

クイズ番組まで台本が存在しているという場合が増えてきて、真剣に番組を見るのがバカらしいと思えるようなことも、また始まっているのです。
〔小林正人〕