欺瞞錯誤8 ミスリードのテロップ

テレビ画面に表示されるテロップは、聞き取りにくい言葉を文字にすることで、理解を深めるというのが第一義の使用目的です。ただ文字を表示するだけでなく、強調する文字の色を変える、形を変える、大きさを変えるといったことで、より目立つようにして、伝えるべきことを伝えるという意図があります。

話した言葉を、すべてテロップで表示するのではなく、一部だけを表示することで、言いたいことを強調することができます。その表示されたキーワードが、言葉で話していることを要約したものではなくて、一部を抜き出すことで勘違いさせるようなことがあり、案外と、そのような使い方がされています。

テロップで表示された文字は印象に残りやすく、言葉と違ったことが表示されていても、テロップのほうが目に飛び込んできて、記憶にも残ることになります。その特性を活用(悪用)されても、気づかずにコントロールされることにもなりかねません。

悪用の例ではないのですが、テロップで間違いを修正したことがあります。テレビ番組には監修がつけられることがあり、間違いがあってはいけない番組では、監修者がいるにもかかわらず別の目線で見る監修者がつけられることがあります。

いわば“監修の監修”で、その役回りをしたことが何回かあります。全国キー局の中でも人気がある海外の専門家が日本の専門的な職場などを巡る番組で、監修の監修をしたところ重大な間違いを発見しました。しかし、インタビューの取り直しをする時間がなく、海外の専門家の発言はテロップを変えて対処しました。

日本語の発言の部分は、テロップを変えるのと同時に、声の音量を抑えて、さらにテロップの修正部分は目立つように表示して、視聴者だけでなくスタッフも気づかない状態にして乗り切ったことがあります。
〔小林正人〕