そこが知りたい21 体温計の目盛りが42℃までの理由

デジタル表示は便利で見やすいものかもしれませんが、数字では真実が見えなくなることもあります。血圧のデジタル表示とアナログ表示を例にして、前々回(そこが知りたい19)、血圧の猛烈な強さをイメージすることの重要性を紹介させてもらいました。

今回は体温計を例にして、人間の体温の危険域について書いていくことにします。

デジタル式の体温計では、何度まで測定できるのかがわかりません。解説書に32〜42℃と書かれたものもありますが、体温計の本体に何も書かれていないのが普通です。限界温度が何度であっても測定できればよいということかと思います。

これに対してアナログ式の体温計(水銀体温計)では目盛りがつけられていて、42℃までしか表示されていません。これ以上に体温が上昇することがないわけではないのですが、上昇した温度を見ることはできません。

というのは、42℃を超えたら生きていることができなくなるからです。発熱して高温になっても41.5℃が限界で、42℃以上になると身体を構成するタンパク質が変成してしまいます。変成したタンパク質は元に戻ることができません。

イメージしてほしいのは茹で卵で、生卵を加熱していくと白身が固まっていきます。この白身は元に戻ることはなくて、温度が下がっても、そのままの状態です。

人間のタンパク質も同じ状態ですが、温度が違っています。卵の白身は60℃で固まり始め、65℃で流動性がなくなります。これに対して生きている人間のタンパク質は42℃と低めの温度で流動性がなくなります。

新型コロナウイルス感染症では、体温が40℃を超えて、死ぬような苦しみを感じたという人もいましたが、実は限界に近い温度まで上昇していたということに気づいていた人は少なかったようです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕