生活習慣病の検査数値を基準以内に抑えることは若いときには、それほど大きな努力は必要なかったのに、年齢を重ねると基準値を上回らないようにするのに多くの努力、大きな努力が必要になってきます。生活習慣病は、まさに生活習慣が反映されるので、健康づくりを支援する方々が、どんなに努力をしても、健康であり続けたいと願っているすべての人の検査数値を基準内に抑えておくことは不可能とされています。
糖尿病のように発祥のメカニズムがわかっていることなら比較的抑えやすいと言えるかもしれません。という話をすると、「それなら、なぜ糖尿病は国民病になってしまったのか?」という疑問が必ず寄せられます。糖尿病であることは血糖値を測定して、基準よりも高まっていたら判定されます。そして、基準以内に抑えることができたら改善した、治ったと言われます。メカニズムがわかっているので、メカニズムに合った医薬品が開発されています。
的確な医薬品を使って、それで血糖値が確実に下がるなら、こんなに簡単なことはないわけですが、糖尿病は血糖値が上昇しすぎない的確な食事をすることが第一となります。血糖値を抑えるためには運動に効果があることが知られていますが、運動をしても的確な食事ができていないと運動による血糖値抑制効果も充分に得られなくなります。医薬品を飲んでも、食事と運動による対策ができていなければ医薬品の効果が充分には発揮されなくなります。血糖値を下げる医薬品を飲んでいる一方で、血糖値を上げる生活習慣を繰り返していたら思ったように下がってくれないということです。
しかし、医薬品に期待しすぎるのか、糖尿病の薬を飲み始めると安心して好きなものを食べる、運動もやめてしまうという人が少なくありません。
若いときには生活習慣を改めなくても医薬品だけで血糖値を抑えることができるとしても、年齢を重ねるほど医薬品の効き目が出にくくなります。このことを、「年を取ると薬への反応が落ちてくる」とか「薬に慣れて効きにくくなる」と考える人もいますが、年を取って変化してくるのは“対応力”です。身体には恒常機能があって、身体が変化すると元の状態に戻そうとする機能が備わっています。その機能が年齢を重ねて、60歳を超える頃から低下していきます。
病気の最大の因子は“年齢”だと訴えている医学者がいますが、本当の因子は“老化”です。老化は体質も関係はしているものの、これまでの生活習慣によるダメージの蓄積が老化を進めていくだけに、正しい生活習慣こそが病気を予防する第一の方法ということです。