定年退職年齢を65歳にして、さらに70歳まで希望をすれば働くことができる制度は、さまざまな社会情勢の変化だけでなく、高齢者の健康度の向上も影響を与えています。
2017年に日本老年学会と日本老年医学会が、これまでの前期高齢者(65〜74歳)、後期高齢者(75歳以上)とされてきた高齢者の区分を、准高齢者(65〜74歳)、高齢者(75〜89歳)、超高齢者(90歳以上)とすることを提言しました。
提言の根拠として、10年前に比べて心身の状態が10〜20年も若返っているとの研究成果を掲げています。10〜20年も若返っているとすると、准高齢者は高齢者ではなく、55〜64歳に相当する体力と認知力であるとのことから、社会を支える側となることがわかります。
内閣府の調査では、自分が高齢者だと感じている人の割合(2021年)は、男性では60〜64歳が19.1%、65〜69歳が30.7%、女性では60〜64歳が15.4%、65〜69歳が34.3%となっています。
また、何歳くらいまで仕事をしたいかを聞いていますが、その割合(2019年)は、男女平均で65歳くらいまでが25.6%、70歳くらいまでが21.7%、75歳くらいまでが11.9%となっています。定年退職年齢が引き上げられると、この割合も大きく伸びることが推測されています。
両学会の提言によって准高齢者は高齢社会において支えられる側から支える側になることが示されました。高齢者の若返りの理由としては、身体的な状態だけでなく、社会参加による精神的な若さの保持も大きな要因としてあげられています。
65歳までの就労、65歳を超えての就労は、より若さを保つことにつながるだけに、今回の定年退職年齢の引き上げ、高齢になっても働ける環境は、日本人の健康に対する意識を高め、実際の結果につながる大転換の時期ということができます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕