「健康な患者」という一般には聞きなれない言葉が医療機関で使われています。同じ病名、同じ病状で病院に来た患者は同じ状態ではなく、年齢が同じであったとしても健康の度合いには随分と差があります。健康というのは身体的状態と精神的状態の両方を指していますが、医療機関としては同じ患者数なら、できるだけ健康な患者を歓迎しています。それだけ手間がかからず、治しやすいということです。
これは医療機関だけでなく、老人福祉施設や介護施設でも同じことです。同じというよりも、もっと深刻で、同じ年齢で、身体的な状況は同じであっても、健康度が違っていると手間のかかり方が絶対的に違ってきます。これは生活習慣病を抱えている人も同じことで、例えば糖尿病の程度は同じであっても合併症が出にくい状態なのか、他の生活習慣病を引き起こしやすい状態なのかによってケアにかかる時間と手間がまったく違ってきます。
血圧や血糖値、中性脂肪値などが基準値を超えて生活習慣病と診断されると、身体的な状態は同じようなものと考えられがちですが、こうなっても自立して生活できる間は病気ではありません。病気は自立できなくなり、他人の補助がなければ自由に動けなくなることを指していて、これはWHO(世界保健機関)の定義となっていて、これを厚生労働省も採用しています。
病気になる前は健康と定義され、入院していても介護施設に入所していても、自立できていれば健康とされます。つまり、「健康な患者」というのは自立できている患者ということで、この状態の人を病気にしないのが医療機関の役割のはずです。
健康な患者でいるために運動指導を行い、栄養指導を行い、さらに休養の方法とサプリメントの使い方も指導されます。
高齢者の健康度の差は、活動のためのエネルギー量の差でもあります。エネルギーの量が充分であれば、身体の変化への対応力も充分となり、血圧や血糖値などの上昇に対しても対応して下がりやすくなります。医薬品を用いたときにも効果が出やすい状態となります。
充分に食事を食べて、充分に身体を動かしていれば、全身の細胞のミトコンドリアで作り出されるエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)の産生量が増え、これが活動のエネルギーとなっていきます。高齢になり、患者になると充分には食べにくくなり、充分に動けなくなるのでATPが少なくなります。三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質をミトコンドリアの中に効率よく取り込み、効率よく燃焼させるために必要な三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は体内で合成されるものの、20歳代をピークに減少していき、エネルギーを作り出す能力も低下していきます。
この三大ヒトケミカルはサプリメントとして摂って、エネルギー量を増やすことができるので、健康な患者となるためには有効に活用したいものです。α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。