欺瞞錯誤12 種子の実態2

日本で品種改良された優れた種子にはF1種というものがあります。これは在来の固定種に対するものを指しています。F1種の説明をする前に固定種について触れておくと、これは自家栽培などによって植物の持つ形質(性質、形など)が受け継がれたものを指しています。

これに対してF1種は、異なる優良な形質の種子(親)を掛け合わせて作られたものです。F1種は、味や見た目が優れているだけでなく、生育がよく、発芽時期や生育期間がそろっているので均一化しやすく、大量生産にも向くという特性があります。また、病気にも強く、これも栽培しやすく、無駄が少ないという特性もあります。

固定種であれば、栽培した農産物から種をとって、同じような農産物を育てることができます。ところが、F1種の性質が受け継がれるのは一代限りであるので、親と同じ子を作ることができない特性(デメリット)があります。

そのため、毎年、F1種の種子を購入しなければなりません。これは種子を販売する会社にとっては大きなメリットであり、常に種が売れるということで、F1種は日本国内の生産では間に合わない状態で、海外で盛んに生産(栽培)が行われています。

この状態は進むだけ進み、日本国内で栽培される野菜類の種子も、実際には海外で生産されたF1種の種子を輸入して使われています。現在の日本で使われている種子のうち、国内で生産された種子は5%ほどとなっています。

日本に輸入されている種子の3分の1ほどはチリからのもので、アメリカ、イタリア、中国と続いています。世界各国で種子を生産するのは天候による生産量の変動を避けるにはよいことであるとの考えから、農林水産省も推奨しています。

日本の伝統野菜であっても、今や種子を輸入して栽培している状態で、日本の農業は輸入に頼っている、海外から種子を輸入しているので、公表されている国内生産率と実態はかけ離れているという指摘も当たっているということです。
〔小林正人〕