欺瞞錯誤13 野菜の自給率が80%というのは本当か

日本の食料自給率は38%という数字が一人歩きしています。この割合はカロリーベースで、エネルギー(カロリー)に着目して、国民に供給される熱量に対する国内生産の割合を示しています。

もう一つの指標の生産額ベースでは食料自給率は58%となっています。

生産額ベースは、生産額(国内生産量×国産単価)から畜産物の飼料輸入額、加工食品の原料輸入額を差し引いたものです、

このほかに重量ベースという指標もあります。

食料品の国内自給率は、実際に国内で栽培、飼育している割合ではなくて、海外から輸入された飼料や肥料を使用している場合には、国内の生産の割合から差し引かれています。

動物の飼料は80%ほどが輸入品です。その90%近くはトウモロコシで、そのうちの70%ほどはアメリカから輸入されています。
国産牛といっても、飼料の輸入割合から考えると、もはや国産牛とは呼べない状況になっているのです。

野菜は生育には肥料が必要で、肥料を使って生育させていくことを前提にして品種改良が行われています。最良の種苗を最良の状態で最良の野菜にしていくためには肥料を使わなければならず、それも化学肥料を前提にしている野菜が多くなっています。

国内で栽培される野菜には国内で生産された肥料が使われているというイメージがあるかもしれませんが、実態は、そうではありません。化学肥料材料のほぼ全量は輸入品で、国産はほぼゼロ、つまり化学肥料の自給率は0%という状態です。

日本の場合、化学肥料の製造コストに占める割合は約60%となっています。野菜の自給率(重量ベース)は80%ほどとされていますが、化学肥料の自給率0%という実情を加味すると、50%を割るような状態と考えなければならないのかもしれません。
〔小林正人〕