日々修行27 ゴーストライティングへの移行

書籍の「著者」として表紙に名前が出ている人は、著者本人が書いていることになっています。複数で手分けして書いたものの、全員の名前を載せるわけにはいかない場合には「編著」となり、代表者の名前が書かれます。

複数の著者がいて、それを載せるのは「共著」ですが、全員の名前を並べて「著者」と表示されることもあります。これは研究論文の世界では「筆頭著者」と呼ばれ、実際に書いた人が誰であっても、最も功績があった人、言い出した人が掲載されます。といっても論文では、筆頭著者に続いて全員の名前が掲載されます。

書籍の場合には、本人は書いていなくて、著述や編集を指揮・監督した場合は監修者となり、書籍には「監修」と表示されます。
実際には監修をしたわけではなくて、原稿をチェックしただけで、場合によっては“名前貸し”と呼ばれるようなことであっても、その多くは氏名とともに「監修」と書かれているので、その違いは見抜きにくくなっています。

名前貸しで登場するのは本人に代わって執筆するゴーストライターですが、私のゴーストライター歴の184冊のうち34冊が該当します。それ以外の150冊は、本人に取材・インタビューをして、資料などももらって代わりに書くという“忙しい先生”に書籍を出してもらうための“代筆屋”です。

若いときに医学研究の大家の手伝いに呼ばれて原稿用紙に書き写したのは、清書であって、アルバイトのようなものです。文字の間違いを修正したり、事実関係の誤認があったときに修正をするのも自分であっても、これはお手伝いの世界で、どちらも勉強をさせていただく、修行のつもりでの関わりでした。

これに対して、誰が書いたのかわからない文はゴーストライティングと呼ばれます。新聞や雑誌では誰が書いたのか、誰の責任で書いたのかわからないものがゴーストライティングですが、なぜか実際に書いた人のことをゴーストライターとは呼ばない慣習があります。

責任は書いた人ではなくて、出版社や新聞、テレビ局、ネット配信会社が取るという形をとっています。これは業界団体の機関誌などでもみられることで、私が関わってきた健康、栄養、運動などの団体の発行物の記事はゴーストライティングの世界でした。

これは“名を売りたい”人にとっては面白くない文章の修行のような仕事でしょうが、私にとっては普段の自分では取材できないところに行き、自分の名前では表現できないことも書かせてもらえる“自分磨き”の絶好の機会でした。

その始まりの年は、書籍のゴーストライターの前半の150冊の最後の1冊を書き上げた1995年のことで、この年が機関誌のゴーストライティングの始まりの年となりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕