シン・日本人の体質5 体質に合っていない医薬品

治療によって体調が改善するどころか、かえって悪化することがあり、これは診断のミス、医薬品の選択の間違い、医薬品の副作用などがあげられることが多いのですが、体質を考慮していない治療法が原因かもしれないという考え方もあります。

これに関連することは前回(シン・日本人の体質4)、東洋医学の証を取り上げて説明しました。そして、証による体質と異なる治療法は、かえって状態を悪化させることがあるという話から、全員に通じる健康法はないということを書きました。

これは中国の医療体制の取材をしたときに強く感じたことであり、中国の実情を聞き出す中で、日本の診察と治療について逆質問されました。中国の医療は現在では西洋医学が中心ですが、西洋医学による治療であっても発想は東洋医学に基づいています。

診察をして最も効果が高い医薬品が判明したら、医薬品を出す前に判定するのは証の違いです。身体が温まりやすい人に、身体を温める作用がある医薬品を使ったら、温まりすぎて悪化させることになります。

そこで体質に合った他の医薬品を選択するか、体質を改善する方法を同時に行うか、体質の改善を優先させるかという判断が行われます。

体質の改善に使われる医薬品は、日本では漢方薬と認識されていますが、中国では中医薬と呼ばれています。漢方薬というのは、中医薬を参考にして日本で開発されたもので、使われている素材は一緒であっても組み合わせや分量などが異なっています。

漢方薬は江戸時代にオランダから伝わった蘭方医学に対して使われるようになった用語で、それ以前に日本に伝わっていた中国の漢の時代の医学は漢方、そこで使われる医薬品が漢方薬と呼ばれるようになりました。

現在では、日本で独自に発展したのが漢方薬と分類されていて、中医学の中医薬とは異なるものです。漢方薬は西洋医学の医療機関でも広く使われるようになっています。中医薬の最も大きな違いは、漢方薬では体質を判断して使われる証が考慮されていないことです。

これは漢方薬が西洋医学の中で盛んに使われるようになった契機が関係しています。漢方薬を愛用していた医師が日本医師会の会長になったときに、漢方薬を西洋医学の治療薬として使うように当時の厚生省に進言したのですが、そのときに証が考慮されず、西洋医学の医薬品と同列で扱われたことが関係しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕