エネルギー代謝に必要なビタミン

代謝に必要な成分の三大ヒトケミカルについては繰り返し紹介しています。三大ヒトケミカルはα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10を指していますが、「それ以外のヒトケミカルは何があるのか」という質問をメディア関係者からよくされます。代謝に関わる成分としてはビタミンとミネラルがありますが、ここではビタミンについて代謝の仕組みとともに紹介します。
食品として摂取したデンプンは、消化酵素によって単糖のブドウ糖にまで分解され、小腸から吸収されて、肝臓や筋肉などの組織にグリコーゲンとして蓄えられます。それ以外のブドウ糖はエネルギー源として使われます。ブドウ糖をエネルギーとするのは細胞内のミトコンドリアでブドウ糖がエネルギーに変換されるときには、体内に取り込まれた酸素を使わないままエネルギーとする解糖系の代謝と、酸素を使う有酸素系の代謝の2つの系統を経ています。
ブドウ糖は酵素の働きによってピルビン酸に変化し、その過程でエネルギーが発生します。ブドウ糖1分子当たり、2分子のエネルギー物質であるATP(アデノシン三リン酸)が発生します。酸素が使われない場合のほか、激しい運動によって酸素が不足したときにも解糖系のエネルギー代謝が行われます。
ピルビン酸は酵素の働きによって補酵素のアセチルCoAに変換され、これがミトコンドリア内のTCA回路に入ります。この回路でできたクエン酸が酸素との反応によって次々と変化し、二酸化炭素を発生させたあと、水と36分子のATPを発生させます。この代謝にビタミンが重要な役割を果たしています。
ビタミンは小腸から吸収されたのち、肝臓から血管を通って各組織に運ばれ、エネルギー源の代謝を補助する働きをします。水溶性ビタミンのビタミンB群とビタミンCは、酵素の働きを補う補酵素して働き、糖質、脂質、たんぱく質の代謝を促進します。
糖質がブドウ糖に分解されるときにはビタミンは関与していませんが、ブドウ糖がアセチルCoAに変換されるときにはビタミンB₁、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸が必要となります。
脂質が脂肪酸に分解されるときにはビオチンが働き、逆に脂肪酸が脂質に合成されるときにはナイアシンが働きます。また、脂肪酸がアセチルCoAに変換されるときにはビタミンB₂、ナイアシン、パントテン酸が必要になります。
たんぱく質がアミノ酸に分解されるときにはナイアシンが、逆にアミノ酸がたんぱく質に合成されるときにはビタミンB₆、ビタミンB₁₂、葉酸が必要になります。また、アミノ酸がアセチルCoAに変換されるときにはビタミンB₆が必要になります。
そして、アセチルCoAからエネルギー産生が行われるときにはビタミンB₁、ナイアシン、葉酸、ビタミンB₁₂が必要になります。このようにビタミンB群が組み合わされて、代謝が行われているわけです。
アセチルCoAは細胞のミトコンドリアの中でTCAサイクルの中でクエン酸から始まって、次々に別の酸に変化して、一周するとATPが発生します。アセチルCoAがクエン酸に変化するときにはビタミンB₁、ビタミンB₂、ナイアシン、パントテン酸が、クエン酸からイソクエン酸に変化するときにはビタミンB₂、ナイアシン、パントテン酸が、イソクエン酸からα‐ケトグルタル酸に変化するときにはナイアシンが、α‐ケトグルタル酸からスクシニルCoAに変化するときにはビタミンB₁、ナイアシン、パントテン酸が、スクシニルCoAからコハク酸に変化するときにはビタミンB₂が、コハク酸からフマル酸に変化するときにはビタミンB₂が、そしてリンゴ酸からオキサロ酢酸に変化するときにはビタミンB₂、ナイアシンが必要になります。
これらの変化による燃焼を促進するためにはビタミンB₆、ビタミンB₁₂も補酵素として使われるので、すべての水溶性ビタミンが必要だということがわかります。