代謝のためのミネラルの役割

人の身体の約95%は炭素、水素、酸素、窒素などの元素が結合した有機物で、残りの約5%の元素の無機質がミネラルとなっています。体内に必要な16種類のミネラルは必須ミネラルと呼ばれます。ミネラルのうち体内に比較的多い7種類(カルシウム、リン、カリウム、イオウ、ナトリウム、塩素、マグネシウム)は多量(主要)ミネラル、少量しか含まれない9種類(鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、マンガン、モリブデン、クロム、コバルト)は微量ミネラルと呼ばれます。
ミネラルには、骨や歯などの身体の構成成分になるほか、体液に溶けてpH・浸透圧を調整する、酵素の構成成分になる、神経・筋肉の調整をするなどの作用があります。
ミネラルは吸収されたあと、肝臓に運ばれ、他の物質と結合するなどして、全身の必要とされる組織に運ばれます。それぞれの組織はミネラルが補われることによって、本来の機能が発揮されます。ミネラルは主には小腸から吸収されますが、亜鉛の一部は胃から、ナトリウムの一部は大腸からも吸収されます。鉄はビタミンCとの組み合わせによって、カルシウムはマグネシウムやビタミンDとの組み合わせによって吸収率が高められます。
ミネラルのうちマグネシウム、亜鉛、銅、マンガン、セレンは補酵素としても働きます。
マグネシウムは多量元素のミネラルで、体内では60~65%は骨に含まれ、残りは肝臓、筋肉、血液などのタンパク質と結合して存在しています。300種類以上の酵素に作用する補酵素であり、筋肉の収縮、神経の興奮抑制、血管拡張による血圧降下などの作用があります。
亜鉛は栄養素の代謝や生命活動などに関わる化学反応に携わるミネラルで、200種類以上の酵素の構成成分であり、体内では皮膚、毛髪、肝臓、腎臓、睾丸、舌の味蕾などの新陳代謝が盛んな細胞に多く含まれます。不足すると新陳代謝の低下から皮膚炎、脱毛、爪の異常、味覚異常などが現れやすくなります。また、亜鉛は膵臓から分泌されるインスリンの構成成分で、インスリンの分泌量を調整して血糖値を下げる働きがあります。また、筋肉細胞がインスリンと反応してブドウ糖の取り込みを行う際に必要となります。
銅は微量元素の必須ミネラルの一種で、鉄の赤血球を作り出す働きを補助する成分であり、赤血球のヘモグロビンの合成には銅が含まれた酵素が必要になります。体内の過酸化物質を分解する酵素(SOD)の成分であり、細胞の酸化を防ぐ抗酸化作用があります。
マンガンは微量元素の必須ミネラルの一種で、骨の形成、消化の補助、糖質と脂質の代謝、成長や生殖を補助する成分となっています。体内の過酸化物質を分解する酵素の成分であり、細胞の酸化を防ぐ抗酸化作用があります。
セレンは微量元素の必須ミネラルの一種で、体内の過酸化物質を分解する酵素(グルタチオンペルオキシターゼ)の構成成分であり、細胞の酸化を防ぐ抗酸化作用があります。血圧を調整するホルモンのプロスタグランジンを作るために欠かせず、セレンの補給で細胞の老化を遅らせ、生活習慣病の予防につながります。ビタミンEとともに摂取すると抗酸化作用が高まることも知られています。