1日に1万歩を歩くのが健康によいという話から、今では8000歩が定説的に語られるようになっています。
1万歩が言われ出したのは“万歩運動”が始まった1964年のことで、その年には東京オリンピックが開催されました。オリンピックを機会に国民的に健康志向が高まったことからウォーキングが盛んに行われるようになり、目標値として掲げられたのが1日に1万歩でした。
その当時の日本人の平均歩数は7000歩ほどでしたが、高度経済成長が始まってから10年が経過して、運動不足と食べ過ぎによって、1日のエネルギーバランスの差が300kcalになっていました。
その当時は生活習慣病が増えているといっても今ほど患者は多くはなくて、食事を減らすのではなく、運動量を増やすことが求められ、歩く距離を増やすことが進められました。
1000歩が100kcalに相当すると大雑把に計算して、300kcalを消費するために3000歩を増やし、合計で1万歩という目標が示されました。
1日に1万歩を歩くためには自分の歩数を知ることが必要ということで、“万歩計”が人気となりました。万歩計は山佐時計計器の商標で、それ以外の会社のものは“歩数計”と呼ばれています。
1日1万歩が推奨される時代は長らく続きましたが、それが見直されるきっかけになったのは2000年から始まった中之条研究の成果が発表されてからです。
これは群馬県中之条町に住む65歳以上の住民約5000人を対象にして、1日の歩数と病気の関係を15年以上にわたって調査した研究です。その結果として発表されたのが「1日に8000歩、そのうち中強度の早歩きを20分」が最も健康度が高いという結果でした。また、医療費削減効果があることも発表されました。
この結果が“独り歩き”する形で、誰もが8000歩を目標にしたほうがよいというようなことが広まっていきました。しかし、これは75歳以上の場合で、75歳未満では1日に1万歩、そのうち早歩きは30分に健康効果が高めることが報告されています。
歩数を稼ごうとしたら、歩幅を狭くして足の回転数を増やせばよいわけですが、理想的な歩行は「大股で勢いよく」が大原則です。歩数と距離と同時に、どんな歩き方をした結果なのかということも重要になります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕