老化は病気の最大の原因か

医薬品を使わずに生活習慣病を治そうとするのは大変なことです。まだ、検査数値が基準値を超えていない段階なら食事と運動で元の状態に戻すことはできるとしても、基準値を超えた期間が長くなれば長くなるほど戻りにくくなります。初期段階で医薬品を使うと、食事の改善や運動をしなくても基準値を下回ることはできます。だからといって医薬品だけに頼っていると、年齢を重ねるにつれて医薬品の効果が出にくくなります。
というのは、人間の身体には恒常性という元に戻ろうとする働きがあり、血圧が高くなれば低くするように身体が調整され、血糖値が高くなれば低くするように調整される能力があります。この調整力は若いときに充分に働くものの、高齢になると働きにくくなります。この恒常性の調整力が衰えないようにするためには、栄養摂取と運動によって身体の機能を発揮させ続けることです。
調整力は栄養と運動の何によって具体的に高められるのかということは、以前から研究されてきましたが、「生命エネルギーである」との考えが広まってきています。生命エネルギーという言葉を使い出すと、なんだか怪しい感じも漂ってきますが、ここでいう生命エネルギーはATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー物質のことで、細胞のミトコンドリアの中のTCA回路でエネルギー源の糖質や脂質を材料として作り出されています。糖質のブドウ糖1分子がTCA回路で燃焼すると36個のATPが作り出されます。その量は1日に50〜100kgにもなり、なんと体重を超えるくらいのエネルギー物質が細胞の中で発生しているのです。
ATPは活動のためのすべてのエネルギーとして使われます。体温を高めるのも、筋肉や心臓を動かすのも、内臓や器官を働かせるのも、神経や脳が正常にコントロールされるのも、免疫を高めて病原菌などと戦うのも、すべてATPが休みなく作り続けられるからです。ATPを電池のように蓄えておく器官は体内にはないので、寝ているときも起きているときも作り続けるしかありません。
ミトコンドリアが多く存在しているのは筋肉や肝臓、脳などですが、特に筋肉は積極的に動かすことによってブドウ糖や脂肪酸を材料にしてエネルギーを多く作り出すようにできます。筋肉が増えると、寝ている間に作られるエネルギーも増えていきます。
老化によって恒常性が低下しないようにするにはATPが多く作り出されるようにすることが大切で、ATPが多く作り出されていれば病気にもなりにくくなるということです。ミトコンドリアの中のTCA回路でエネルギーを作り出すためには、ミトコンドリアに効率的にエネルギー源の糖質(ブドウ糖)と脂質(脂肪酸)を取り込まなければなりません。ブドウ糖を取り込むためにはα‐リポ酸が、脂肪酸を取り込むためにはL‐カルニチンが必要になります。これらをTCA回路で効率的に燃焼させるためには補酵素であるコエンザイムQ10が必要になります。
これらの成分は三大ヒトケミカルと呼ばれていますが、代謝に必要であることから体内で合成されています。どれも20歳代をピークに合成量が減り、蓄積量も減り続けていきます。そのために年齢を重ねるほどATPを作り出す能力して低下していくことになり、これが老化を進める要因となります。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。