厚生労働省から、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が発表されました。
以下に、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の「睡眠と嗜好品について」の「アルコール」を紹介します。
〔アルコール〕
「晩酌は控えめにし、寝酒はしない」
アルコール(エタノール)は一時的には寝つきを促進し、睡眠前半では深い睡眠を増加させます。しかし、睡眠後半の眠りの質は顕著に悪化し、飲酒量が増加するにつれて中途覚醒系回数が増加することが報告されています。
アルコールは、摂取後に体内で代謝され、アセトアルデヒドという物質に変換されます。アセトアルデヒドは二日酔いの原因物質です。また、強い交感神経刺激作用を持ち、睡眠を阻害する血中のカテコールアミン(興奮性物質)を増加させます。
さらに、アルコールは閉塞性睡眠時無呼吸をはじめとした様々な睡眠障害を増悪させます。近年、一晩におけるレム睡眠出現量が少ないと将来の死亡リスクが高まるという報告があり、多量(0.75g/kg以上)のアルコール摂取はレム睡眠を著明に減少させることから、長期的な健康リスクとなりうるとの指摘もあるため、飲酒量には注意しましょう。
アルコールの代謝能には個人差があり、特にアルデヒド分解酵素(アルデヒド脱水素酵素:ALDH)の活性の高さに影響を受けます。ALDHの活性が低い人は飲酒後に顔が赤くなりやすい等の特徴があり、日本人を含むアジア人は西欧人やアフリカ系の人より活性が低い人が多いことが知られています。ALDHの活性が低い人は、アルコール摂取量が少量でも影響を強く受けやすいので、より一層注意が必要です。
アルコールは連用することで依存や耐性を形成し、離脱作用によってアルコールを飲まないとよく眠れない状態に至る可能性があります。そのため、良い睡眠のためには、寝つきを改善させるために飲酒をする、いわゆる「寝酒」も含めて、大量のアルコール摂取(深酒)や、毎日の飲酒は推奨されません。
習慣的な寝酒は睡眠の質の悪化とも関連しており、寝酒の原因となる不眠症状がある場合には、医師に相談することが推奨されます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕