細胞の糖化は糖尿病の薬で進むのか

糖化は糖質の摂りすぎによって細胞が老化していくことで、糖化すると細胞が褐色になっていくことから健康の面からだけでなく、美容の面でも注目されています。糖質の摂りすぎによって細胞の中にブドウ糖が多く蓄積されていくことが原因なので、糖質制限は効果があると考えている人も少なからずいます。それは正しいとしても、だからといって食事で糖質を摂らなければ健康になれるという主張には首を傾げる人も少なくありません。
「糖尿病の薬は糖化を進める危険性はないのか」という質問を雑誌記者から受けました。これと同じことをサプリメントのセミナーで質問として聞かれたことがあります。糖尿病の薬には、糖質がブドウ糖に分解されるのを抑えるものが第一に使われますが、これはブドウ糖がゆっくりと吸収されることによって血糖値の急上昇を抑えるためのもので、糖化には関係がありません。関係があるのはインスリンの分泌を高める薬で、インスリンによって細胞にブドウ糖が取り込まれているので、インスリンが多く分泌されるようになると血糖値が下がるようになります。
血糖値が下がるのは細胞に多く取り込まれた結果で、多く取り込まれるほど細胞内のブドウ糖は多くなりますが、このブドウ糖が細胞内のミトコンドリアに効率的に取り込まれて、エネルギーとなっていれば細胞内のブドウ糖が多くなりすぎることはなく、糖化が進むようなこともないはずです。インスリンが多く分泌されて、ブドウ糖が多く取り込まれた後にミトコンドリアにブドウ糖を送り込むためにはα‐リポ酸が必要になります。
ブドウ糖は細胞内でアセチルCoAに変化してからミトコンドリアに取り込まれて燃焼サイクルのTCA回路に入っていきますが、ブドウ糖をアセチルCoAに変えるために欠かせないのがα‐リポ酸です。α‐リポ酸は体内で合成されているものの20歳代をピークに減り続け、ブドウ糖を燃焼させる能力が低下していきます。ブドウ糖の燃焼が少なくなると、細胞内のブドウ糖が多くなり、細胞から外に溢れ出ると血液中のブドウ糖が多くなり、これが糖尿病の原因となります。年齢を重ねるほど糖尿病が増えるのは細胞にブドウ糖を取り込む能力が低下することだけでなく、α‐リポ酸の減少も影響していると考えられています。
α‐リポ酸が減少しているところにブドウ糖が多く取り込まれると細胞内のブドウ糖が増えすぎて、糖化が進むのも当然に考えられることです。となると、血糖値が下がったと喜んでいる場合ではありません。ブドウ糖を積極的に燃焼させるためにα‐リポ酸を多く摂る必要があります。しかし、α‐リポ酸は体内で合成されるために、食品からの吸収量は少なくなっています。食品からは摂りにくいものの医薬品として吸収率を高めることは可能です。今では食品として摂ることも許可されており、サプリメントの成分ともなっています。
サプリメントとして摂ることはできるものの、天然型のR体のα‐リポ酸は胃液で分解されやすいことから、非天然型(人工型)のS体と組み合わせたラセミ体にして使われています。体内ではR体しか使われないので、半分は使われないことになります。S体のα‐リポ酸はインスリンを凝集させて働かなくさせることから低血糖になることが確認されています。
ここまで説明してきたら、「インスリンが働かなくなるから低血糖ではなく高血糖になるのでは」という質問が寄せられましたが、インスリンが不足するとミトコンドリアで作り出されるエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が不足して、全身に影響が出てくるので、膵臓からインスリンが多く分泌されることになります。そのためにインスリンが濃い状態になって、急にブドウ糖が細胞に多く取り込まれて低血糖になるのです。
ATPは全身のエネルギーとなるだけに、これが不足すると糖尿病に打ち克つパワー(体内の調整能力)が不足するだけでなく、他の疾患についても発症しやすく治りにくいことにもなります。
糖尿病の薬としてインスリンの分泌を進める作用のものを選ぶときには、R体のα‐リポ酸を摂ることも一緒に考えるべきだということです。
α‐リポ酸については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。