「甘いものは食事の一環として食べる」は本当か

健康を扱ったバラエティー番組で、八丁味噌は血糖値の上昇を抑えるので、愛知県には糖尿病が少ないと紹介していました。愛知県民に糖尿病が少ないのは事実で、愛知県民といえば赤味噌の代表である岡崎の八丁味噌の消費量が多いので、これを結びつけるのはテレビ番組の手法としては当然のことといえます。
愛知県の食事といえば、八丁味噌を使った味噌カツにきしめん、エビフライに手羽先、ういろうと、なんとなく腹が膨れる料理が多く、最近の名古屋メシも満腹食です。糖質を多く摂っているのに糖尿病が少ないとなると、特徴的な食品が注目されるのもわかります。愛知県には朝食を喫茶店でしっかりと食べるモーニングという食文化もあります。
名古屋の人口は約231万人で、愛知県の人口の約752万人のうちの30%ほどを占めているので、これも名古屋の食品が影響しているという論拠の一つに使われています。八丁味噌の濃い味の料理を食べるには、ご飯を多く必要になります。普通なら血糖値が上昇しやすく、糖尿病が多くなってもおかしくない話です。
そんな愛知県民に糖尿病が少ない理由としてあげられているのがメラノイジンの存在です。メラノイジンはたんぱく質を加熱したときのメイラード反応によって発生する褐色成分で、大豆のたんぱく質から多く発生します。加熱して発酵によって熟成すると多く発生するということで、八丁味噌には最もメラノイジンが多く含まれています。
メラノイジンの有効性は、以前は抗酸化作用が一番で、血管の強化による血流促進、そして食物繊維としての働きから便秘の解消があげられていました。この有効性は今も“有効”ですが、最近の研究で小腸からのブドウ糖の吸収を抑制する働きが確認されたことから、メラノイジンが多く含まれている八丁味噌を一番食べている愛知県民に糖尿病が少ない理由として広まっているというわけです。
ここまでは、よくある話でよいのですが、この番組を見ていた他局のディレクターから「ドクターのコメントが気になる」という話を聞きました。どんなコメントなのかというと、糖尿病を防ぐ方法として「甘いものは食事の一環として食べる」と言っていました。おそらく、甘いものを食事と食事の間に食べると血糖値が下がる時間が少なくなり、膵臓に負担がかかって、糖尿病になりやすくなるという意味でコメントしたのだと思います。
しかし、これを聞いて、「食事の後に菓子を食べるようにした」と言っている人がいて、それは勘違いと指摘しました。砂糖が含まれた菓子は血糖値が急上昇するので膵臓からインスリンが多く分泌されます。では、食後に菓子を食べると、どうなるのかというと、食事で上昇した血糖値が菓子の砂糖で、さらに上昇することになるので、むしろ危険だという考えもあります。このへんのことを勘違いされないようにコメントしてほしい、テロップで注意書きを入れてほしい、というのが私たちの考えです。