日々修行57 治療食の考え方の変化

同じ食材を使って同じ料理をすれば同じ栄養摂取ができるというのは栄養学の基本かもしれませんが、調理法によって摂取の結果が変わってきます。それは、どれだけの量が食べられるかということです。

病院給食では、提供された食事を全部食べることを基本として分量が決められています。食欲がわかない状態であるので、必要とされる食事量を減らすということは許されることではないはずです。ところが、許されていないことをしている例も実際にはあります。

提供しても残されて、それを捨てるしかないとしたら、分量を減らそうという経済的なことを優先させている病院を取材したこともあります。「よくなったら、これだけの量を食べられる」「これだけの量が食べられるように治療を進めていくので頑張りましょう」という言い方をしている病院がある一方で、“もったいない”との考えをしているところもあるということです。

食材が一種類だけであったら、一口食べてみて食べられないと感じたら、そこで終わってしまうことになります。そこで食材の種類を増やして、一つが食べにくければ次の食材と箸を伸ばしてもらう工夫がされます。

ここまではよいのですが、すべてが同じ味付けをされていると食材が違っても味の想像がつくことから、他のものも食べにくいということが起こります。そこで食材ごとに味付けを変えて、少しずつ食べていく中で多くの栄養素を摂取してもらおうとする考えもあります。

このようなことは臨床栄養の機関誌を担当しているときにも書いたことがありません。というのは、別の食材を一度に煮るのと、別々に煮て味付けを変えることでは調味料の数も違い、手間も時間もかかるので、予算の関係もあってできないところが多いことがわかっているからです。

これは病院給食だけでなく、介護の食事でも言えることではあるものの、実際にやっているところは少なく、調理をする人にも食事のサポートをする人にとっても負担がかかることなので、なかなかすすめにくいところがあるのが現実的なところです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕