発達障害の自閉症スペクトラム障害は閉じこもりがちな性質で、周囲が見えなくなるところがあるものの、集中して長時間の作業でも平気で取り組める能力に優れています。その特徴を活かす学習と仕事を見つけることができれば、他の人よりも優れた能力を発揮することが可能となります。
注意欠陥・多動性障害は集中ができずに、多くの情報が入りすぎるために落ち着いて行動することができないというマイナス面が強調されるものの、こだわりがなく周囲に目配りができる性質、多様なものを取り入れようとする行動は業種・職種によってはプラスにもなります。
適材適所の配置ができれば他の人にはない能力が引き出されるというものの、生産労働の人材として活用することによって、どれくらいの利益があるのか、経済損失につながっているのかということは明らかにはされてきませんでした。
2021年3月30日の世界自閉症啓発デーに合わせて、民間シンクタンクの野村総合研究所が、自閉症スペクトラム障害と注意欠陥・多動性障害を人材として活用できていないことによる経済損失が年間2兆3000億円になるとの推計を発表しました。
これは『デジタル社会における発達障害人材の更なる活躍機会とその経済的インパクト』として、詳細な調査結果とともに公表されています。
少子・高齢化が急速に進む日本では、今後40年間で生産労働人口が約35%も減少すると推計されています。2020年の生産労働人口は7406万人ですが、これが2060年には4793万人にも減少するとみられています。
成長市場であるIT業界では8年後の2030年でさえ、需要数約192万人に対して供給数は約133万人と、約79万人不足すると試算されています。
産業人材の確保のためには、現段階では充分に働けていない人材の活躍機会を生み出すことが重要で、その人材として発達障害の人が着目されています。野村総合研究所の約10万人を対象とした調査結果によると、自閉症スペクトラム障害と注意欠陥・多動性障害の診断を受けた18〜65歳の生産労働人口は約140万人いると推計されています。
アメリカでは自閉症スペクトラム障害のある人を活用しないことによる年間経済損失は円換算で19兆〜21兆円、注意欠陥・多動性障害では11兆〜21兆円と推計されています。海外の大手企業では発達障害人材の職務適性に着目して、IT、金融、製造などの分野で高度IT専門職として採用・育成を積極的に進めています。
日本の1年間の経済損失は自閉症スペクトラム障害で1兆3000億円、注意欠陥・多動性障害で1兆円とされていて、少子・高齢化による生産労働人口が少ないことを考慮してもまだまだ少ない数値です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕