日々修行61 病院給食のちょっとした工夫

病院給食がおいしくないと言われる要因の一つに塩味の薄さがあります。塩味は、「しおあじ」と読むのは塩でつけた味の意味で、「えんみ」と読むのは料理の塩の味加減を意味します。塩分は、おいしさの左右する重要な要素となっています。

健康の維持増進を目的とした食事では、摂取する塩分を減らすことが求められますが、それは塩分(ナトリウム)の過剰摂取によって血圧が高まるからで、塩分を減らすことで血圧が低下することがわかっています。

日本人の1日の平均的な塩分摂取量は10gほどですが、厚生労働省の目標量は1日あたり男性が7.5g、女性が6.5gとされています。これは健康な状態の人の場合で、血圧測定で基準値を上回っている場合には1日6g未満が目標とされます。

これを普及・推進するために国立循環器病研究センターでは、「かるしおプロジェクト」によって、塩分が少ない食品、減塩レシピなどの普及に努めています。

塩分制限をしても、おいしいと言われる病院給食は管理栄養士・栄養士にも調理師にも重要なテーマとなっています。その成果を学会で発表した大学病院があり、取材に行ったことがあります。

入院患者に合わせて塩分を微妙に調整することは、大量に調理をする給食では難しいことで、見た目は同じでも塩分量が異なる料理を提供するのは困難だとされているのに、その大学病院では1g単位で患者に合わせているということでした。

取材をしてみたら、最低限の塩分で調理をして、患者によって塩の小袋を食器の横につけて出していました。自分で塩を加えて、個人に合った塩分量にして食べてもらおうということです。

塩分量は同じであっても、いつ加えるのかによって味は変わってきます。塩分量を微妙に変えているということは入院患者の身体にはよいことであったとしても、料理として成り立たないような塩味の使い方は決して誉められるものではありません。

塩分を減らしても、おいしくする方法は複数の方法があります。塩味が薄いということで不評であった病院で、実験的に塩を増やさずに、おいしく食べてもらえることに挑戦したことがあります。簡単に言うと、出汁をたっぷりと使っただけなのですが、塩分を減らしても濃くておいしいとの評価が得られました。

また、汁物は同じ味が続くと、おいしく感じられなくなることがあることから、同じ料理でも醤油味、塩味、味噌味と変化をつけることで評価が高まります。同じ味噌味であっても、白味噌、赤味噌、合わせ味噌と定期的に変えていくことで、変化が生まれて、おいしく感じてもらえます。

さらに塩分が少なくても、酸味、焦げ味を加えることで、おいしく感じてもらうことができるので、いかに工夫に頭を使うか、努力を続けるかということをアドバイスしています。そのアドバイスのために、今でも研究を重ねています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕