発達障害者の人材活用は、将来的に人材不足となることが明らかな医療・福祉分野にも期待されています。
厚生労働省の「厚生労働白書」(令和2年版)では、超高齢社会における社会の変容の中で働き場について触れられています。
推計の年は2040年(令和22年)で、そのときには高齢化率は35.3%(高齢者数3921万人)と推計されています。2020年が28.4%(3589万人)、30年前の1989年(平成元年)が12.1%(1489万人)であるので、大きく増えていることがわかります。
これだけの高齢者を支えるためには、そのための人材も増やしていく必要があり、1989年の医療・福祉の従事者は221万人(総就業者数の3.6%)であったのが30年で843万人(12.5%)に増え、そして20年後には1070万人(20%)にもなるとしています。
初めの推計では海外の人材も確保して17.7%で抑えられる見込みも立てられていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大で海外の人材を期待するのは難しくなり、国内の人材に頼るしかなくなったことで5人に1人が医療と福祉で働かないと超高齢社会を支えられないという実態が明らかになってきました。
超高齢社会を支える人材として期待を向けているのが発達障害者で、発達障害の人が働き手にならなければ将来の社会を支えられなくなるほど状況は逼迫しています。そして、サブの仕事に甘んじているのではなく、発達障害の特性を他の人にはない優れた能力に変えていくことが可能となっています。
医療と福祉の世界で中心的に働くためには専門の資格が必要で、発達障害の人に、その位置取りで働くことを求めるのは大変なことだと認識されています。しかし、全就業者の20%も必要な時代となると、資格者の仕事の周囲に新たな働き場が着実に増えていきます。
現場仕事だけでなく、商品開発、商品流通、情報提供など、これらの周辺事業を的確に実施するためにはIT化が必要であり、その人材を担うことも期待されています。
医療・福祉分野のIT業務を担うことができる技能を身につける機会を設けるために、医療・福祉の事業分野との交流による視野や世界観を拡げるための知識取得と、IT技能の習得を可能とする教育の提供は、今後の新事業として重要度が増すものと認識されています。
発達障害は、子どものときの特性が、そのまま成人になっても継続するという特徴があります。成人になると、社会での生活への慣れもあって、子どものときのような極端な反応は見られなくなることが多いものの、従来のままの社会との交流が苦手という特性は続いています。
発達障害の改善には、できるだけ早い段階で取り組むことが重要であり、可能であれば就学前の段階で支援するべきです。発達障害児支援施設では3〜5歳の未就学児を対象とした支援が進められています。
しかし、発達障害児に対する社会の理解の進みが遅いこともあって、親が子どもの発達障害を隠す、子どもに発達障害であることを伝えない、医療機関で診察を受けないといった例も少なくありません。
このような状況では、将来がある子どもの芽を摘んでしまうことにもなりかねません。的確な発達障害の支援が受けられるようにして、ギフテッドと呼ばれる他の子どもたちに勝るような才能を発揮できるようにしてあげるためにも、地域社会の理解を進め、子どもたちの支援を早い段階でし続けるためにも、児童発達サポーターの養成は重要な役割を担っていると認識しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕