今さら正しい足裏の使い方の話

ウォーキングの基本は足の裏に路面を感じながら歩くことです。足の構造を見ると、かかとが厚くなっているのは、かかとから着地する歩き方を歩行の歴史が始まってから続けてきたことによる進化です。クッション役のかかとから着地した後は足の側面を路面に徐々に触れさせながら体重を前方向に移動していって、もう一つのクッションの踏みつけ部が当たった後、指へと体重を移し、そして第一趾(親指)の腹で蹴り出す感じで足裏を浮かせます。この歩き方は、土踏まずがあるからできることです。
土踏まずは踏みつけ部とかかとの間がアーチ状になっていることからできた人間らしい歩き方をするための構造で、立って歩くことができる猿は、いわゆる扁平足状態になっています。このアーチがあるからクッションを補って歩くことも足へのショックが強くなる走ることもできるわけです。
かかとから指までの動きによって前方へと踏み出して、今度は逆の足裏を設置させ、移動させていくわけです。
シューズを履いていても、これと同じ歩き方をするのが基本で、ウォーキングシューズは足の機能を補って効率的に歩けるようにデザインされています。ところが、本来の歩き方ができるウォーキングシューズを履いていても、その機能を使っていない人を見かけます。高齢者に多くなっていますが、いわゆる摺り足で歩いている方々です。摺り足は柔道や剣道、相撲など下半身を安定させるのに適した方法で、農耕民族に適した歩き方とされています。足先を上げず、かかとから足をつくこともない穏やかな歩き方ではあるものの、高齢者の場合には足の力が全体的に弱まってきて、歩幅を広げられなくなり、それで安定した歩行をするためにチョコチョコと足を踏み出すようになります。
歩くことは足から刺激が全身に伝わり、骨を鍛え、脳も鍛えるということでウォーキングが簡単にできる効果のある健康法として紹介されています。その効果は、あくまでかかとから接地する歩き方によって得られるもので、ショックが極めて少ない摺り足では期待薄です。摺り足は楽であるかもしれませんが、それに慣れてしまうと、だんだんと歩幅を広げた歩き方ができにくくなります。できにくいだけでなく、できなくなり、ついには歩けなくなる不安もあります。
年齢を重ねると、以前は当たり前にできたことができなくなっていきます。それはやらなくなったことの結果です。走らなくなると走れなくなり、早歩きをしないと早歩きができなくなり、長く歩かないと長く歩けなくなり、正しい歩行姿勢で歩かなくなると歩けなくなります。歩いて脳に刺激を与えないと脳の機能が低下していきます。歩くことは腸の状態をよくすることが知られていますが、歩く時間が減ったり、外出する機会が減ると腸の状態も悪くなっていきます。
必ずしも、そうとは限らない人もいるものの、できることをやっておかないとできなくなるということを意識して、できるだけ歩くことが健康以上の基本となります。ということで、同じ歩くにしても本来の歩き方をするということを強く意識して、足の裏に路面を感じながら、路面に反応する足裏を意識しながら歩くこと大切です。
といっても、歩く力が落ちてきた人に以前と同じように歩くようにと言っても、無理だという人も少なくありません。そこでポールを用いたノルディックスタイルのウォーキングを進めていますが、ポールに頼って楽に歩くだけでなく、足腰の負担が減る利点を活かして足裏の感覚を呼び戻しながら歩くことが重要であるとポールを用いた歩行を指導するときに話をさせてもらっています。