コロナ禍の3年間のマスク着用によって、表情が見分けにくい状況が続きました。日本人は「目は口ほどにものを言う」と表現されるように、目の動きや目の周りの動きに気持ちが現れやすく、また気持ちが読み取れるという特徴があるとされてきました。
微表情では、目と周辺の動きも参考にされるものの、重要となるのは鼻や口の周りの微細な筋肉の動きです。その重要な微表情を把握することが、マスクをつけることで読めなくなってしまいました。
それでも日本人は「目は口ほどにものを言う」と言われることから、マスクで顔の下半分が見えなくても、気持ちを見抜くことはできると言われてきました。また、マスクで隠れた部分が見えなくても、人間関係に大きな問題はないとも言われてきました。
ところが、鼻から口が隠されることによって、子どもの発育に大きな影響が現れました。それは、自分の表情が伝えられないこと、相手の表情が伝わってこないことによって、感情の交換、気持ちの伝え合いができなくなったことです。
完全にできなくなったわけではない、との反論はあるものの、微妙な表情を読むことによって徐々にトレーニングされていくことも感情発達が妨げられることになったのは事実です。
子どもは自分の感情を言葉だけでなく、表情とともに伝えています。その表情がマスクによって伝えられないことで、相手に伝わったのか、それとも伝えられなかったのかの判断ができなくなります。
また、相手の表情も判断できないことから、表情によるやり取りができにくくなった(できなくなった)ということが全国的に起こりました。そして、表情をフィードバックしてもらえない子どもから感情が消失するようなこととなりました。
発育段階でマスクをつけていた子どもは、感情表現が乏しいと言われます。これは表情のフィードバックができないことだけが原因であるとは言えないものの、ただでもコミュニケーションが苦手な子どもが増えている中では、さらには発達障害が子どもの10人に1人の割合でみられる時代には、失われた分を取り戻す工夫と努力が必要になります。
今は見抜きやすい微表情も、マスク世代の子どもが大人になったときには、通じにくくなっているのではないかとの危惧もされています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕