人間の体質は、歴史的な環境と、その環境の中で得られる食品が大きな影響を与えてきました。同じ民族であっても、数百年、数千年と別のところで暮らしていることによって、その環境に合わせるように体質は変化してきました。
東アジアの国民は、世界的に見れば同じような体型、顔立ちと分類することができます。しかし、暮らすところの条件(山なのか平地なのか、海が近いか、気温の差と年間を通じての変化など)によって、徐々に変わってくるのは当然のことです。
日本は島国で、森があり、海に面している地域が多く、比較的温暖で、食べ物の種類も豊富であることから、世界と比較すると身体には楽な環境であり、その中で暮らしてきた日本人は多くのエネルギーを消費することなく生き抜くことができたと評価されています。
生命維持をするために重要な穀類が豊富であり、“瑞穂の国”“米国”と呼ばれてきました。“米国”といっても「アメリカ」のことではなくて、「こめぐに」です。アメリカを亜米利加と表記した時代があり、それを短縮したというのは余計な情報です。
北方で文明が発展したヨーロッパでは穀類が多く採れないことから、主なエネルギー源を肉類に頼ったことで、脂肪をエネルギー源として効率よく使うことができる体質になりました。アジアでも北方のモンゴル、中国でも同じように、脂肪によってエネルギー代謝がよい体質となってきました。
脂肪を効率よくエネルギー化するためには、エネルギー産生のための重要な役割をする全身の細胞の中にあるミトコンドリアに脂肪酸(脂肪の最小単位)を取り込むために必要な代謝促進成分が多く作られるようになりました。
この代謝促進成分はL–カルニチンといって、必須アミノ酸のリシンとメチオニンを材料に体内で合成されています。肉食が多く、脂肪を多く摂取する民族は、その合成量が多く、脂肪を多く摂取しても、それが効率よくエネルギー化されることから、それに合わせた体質となっていきました。
それに対して日本人は、脂肪の摂取量が少なかったことからL–カルニチンの合成量も体内の蓄積量も少なく、一定の摂取量を超えると、脂肪は有効に使われるよりも体内(脂肪細胞)に蓄積されていくことになります。
日本人は年齢を重ねていくと、同じ食事量、同じ運動量でも徐々に太っていくようになるのは、L–カルニチンが不足していることと関係しています。また、L–カルニチンの合成量は20歳代前半がピークで、それ以降は徐々に減少していきます。
日本人は、終戦後には今の先進国では最下位で平均寿命であったところから、一気に世界一の長寿国となりました。L–カルニチンが加齢によって減少していくということは、ますます不足した状態になるということです。
そのことが、どのようなことを招くのかということは次回(シン・日本人の体質12)、説明していきます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕