体質の話をするときに必ずといってよいほど取り上げられる東洋医学の証ですが、東洋医学では体の状態の特徴を分類して、該当する証を組み合わせてパターン化して各人の体質としています。その体質に合わせて改善のための療法が施されているわけですが、代表的な証としては気(エネルギー)・血(血液)・水(水分)や温熱・乾湿・虚実があげられます。
後者は身体が温まるか冷えるか、体内の水分が少なくて乾くか多くて湿っているか、身体が強いか弱いかで分類して、それぞれ中庸も加えて9パターンとして、この組み合わせで27種類のパターンに分けられています。この温熱・乾湿・虚実は食事による体質改善の判定に使われています。
漢方薬は日本では西洋医学の治療薬と合わせて使われているものの、中国や韓国などとは異なった使われ方がされています。本場の東洋医学は体質に合わせた療法が行われており、漢方薬を例にあげると、身体が冷えやすい人に身体を温める作用があるものを使うのは体質を中庸に近づけるため治療効果が高いものの、逆に身体を冷やす作用があるものを使うのは冷やしすぎることになるために悪化させることになります。一般には身体を温めるものはよいと考えられがちですが、温めすぎるのは体調を悪化させることにもなるという考えをしています。
つまり、漢方薬は体質によっては“薬”にもなれば“毒”にもなるという考え方がされているわけで、そのために証による分類と体質の見極めを重視しているというわけです。
漢方薬に限らず、中国では西洋医学の医薬品も証に合わせて使われています。どんなに効果がある医薬品でも体質に合わないものは効果がなく、そればかりか体に悪影響を与えるとの考えから体質に合った医薬品を使うことを最重視させています。
日本では東洋医学の治療では証に基づいた体質に合わせた治療が行われているものの、西洋医学では証の判定は行われず、症状に合わせた最良の医薬品を用いることが優先されています。漢方薬は効き目が緩やかで、副作用も出にくいとされていることから、漢方薬は西洋医学の医薬品に補助的に使われています。それもあって、日本では漢方薬を使用するときには証の判定は行われず、西洋医学の医薬品と同じ位置づけで使われています。
食品にも漢方薬と同様の機能が認められているものもあります。中国には“薬食同源”という言葉があり、食品にも薬と同様の作用があることから治療や予防にも用いられています。日本では一般に“医食同源”が知られていますが、この言葉は日本で誕生したものです。
“薬食同源”という考えに従うなら、食品が持つ機能が証に合えば医薬品的な効果が得られ、証に合わなければ有害にもなるということになります。食品にも温冷の作用があり、東洋医学では地面から上に出ている野菜や果実は体を冷やし、土の中にある根や塊球には体を温める作用があるとしています。また、春と夏に採れるものは体を冷やし、秋と冬に採れるものは体を温めるとされています。この作用については科学的にも研究され、東洋医学の考えは西洋医学でも裏付けられています。
食品に含まれる成分にも身体機能を調整する作用があることが明らかになり、健康食品の特定保健用食品や機能性表示食品が広まるにつれて、調整機能が高い健康食品・サプリメントの成分も広く使われるようになっています。食品の成分は医薬品と似たような機能があると同時に、副次作用(医薬品でいう副作用)があることも判明してきました。食品には温冷などの作用もあり、利尿作用などによって体内の水分を調整することも知られていることから、体質に合った食品を選んで摂ることも重要であることが認識されるようになってきました。